奈良県からUターン

波部 祐也 さん

「飲食店」ではなく、人と人の繋がりが生まれる「たまり場」を目指しています。

 

 

 出雲市大社町生まれ。大学進学を機に関西に移り住む。大阪・奈良と2社での勤務を経験した後、大社町にUターン。空き家を活用した店「“TAMARIBA”NAMI」を営む。一般的な飲食店と違い、客同士に繋がりが生まれるなど、まさに「たまり場」として、地元客から観光客まで人気のスポットとなっている。

 

 

出雲市大社町にUターンされた経緯は?

 生まれ育った大社町を離れたのは、兵庫県神戸市の大学に進学したことがきっかけでした。大学時代は時間もたくさんあったので、様々なことにチャレンジし都会暮らしを満喫していました。

 ところが、大学3年生のときにある転機が訪れました。父が急死したのです。私の実家は、配置薬の商売を代々営んでいました。父が亡くなったことにより、必然的に私が跡を継ぐべきだと思い、母に話をしました。しかし、時代の変化で配置薬の商売自体が難しくなることが予想され、父も生前、この仕事は自分の代で終わりだと考えていたことから、跡を継ぐことを反対されました。このとき、母から言われたのが「同じことをするだけが跡を継ぐことじゃないよ」という言葉でした。全く同じことでなくても、大社町で商売をするということが父の後を継ぐことになるのではないかと、この言葉がとても腑に落ちました。そして、「一度関西で就職して経験を積んでから、30歳までに大社町に戻り、何かしらの事業をしよう」と決意しました。

 大学卒業後は、印刷機やカメラのメーカーの販売会社に就職し、営業職として大阪で働きました。営業先の企業は業種も幅広く、世の中にどんな仕事があるのかということも学ばせていただきました。途中からは、住みよい環境を求めて奈良県に引っ越し、大阪まで通勤していました。

勤めて3年が経つ頃には仕事にも慣れ、関西で営業の賞をいただいた頃から、次のステップを意識するようになりました。30歳までに帰郷して事業を立ち上げることを想定すると、もっとコアな、地域と密着したような仕事も経験しておきたいという思いが強くなっていました。結果として、奈良県で偶然出会った、地域活性化に取り組む企業に転職することになりました。

 奈良県の企業では、地域情報誌を製作するために、飲食店などへの営業・取材をはじめ、行政への提案営業やイベントの運営など、様々なことを経験させていただきました。2年間勤めたのですが、実際の月日以上に充実した濃い期間でした。

 そして、祖母の容体も悪くなっていたこともあり、帰郷するにはベストなタイミングだと感じ

大社町にUターンしました。

 

 

なぜお店をオープンすることになったのですか? 

 大社町に帰って、地域活性化につながることを仕事にしたいとは決めていました。そして、空き家になっていた旧自宅もあったので、そこを活用して何かしたいと考えました。

 大社町には、観光客向けの店は多いけど地元民向けの店が少ないという課題意識や、空き家のスケール感もちょうど良かったことから、飲食店をしようと決めました。そして、平成28年に「“TAMARIBA”NAMI」をオープンしました。オープンまでの準備期間で農業の勉強もさせていただき、自分が畑で育てた野菜も食材として提供しています。

 

 

「“TAMARIBANAMI」はどんなお店ですか?

 よく「何屋さんですか?」と聞かれるのですが、答えに困ってしまいます。強いて言えば、夜は居酒屋、昼はカフェのような、定食屋のような…。飲食店ではあるのですが、気持ちとしては「飲食店」ではなく、人と人の繋がりが生まれる「たまり場」を目指しています。実際に、思惑通り地元民から観光客まで様々なお客さんが来てくれますし、私もお客さんとゆっくり話して仲良くなることがよくあります。居合わせた別のお客さん同士が一緒に呑むなんていう光景も、うちでは珍しくありません。

 なんと「観光客のリピーター」もいます。最初は県外から観光にいらした際に、偶然店を見つけ、いろいろな話をして楽しんでくれたお客さんが、次はうちの店に来るために出雲に来て、ついでに観光する。そんなお客さんもこれまでに複数ありました。

 お客さんからお礼の手紙をもらうこともありましたし、お中元をいただいた事も。

 よく仲間から「仕事大変?」と聞かれますが、そもそも仕事と思っていないぐらいなんです。自分の家にお客さんが来てくれて対応しているようなスタンスです。その「ゆるさ」がお客さんにも伝わり、リラックスしてもらえているように思います。そんなこともあり、いい具合に「たまり場」になってきています。これからも「遊びが仕事、仕事が遊び」という心持でやっていきたいです。

 

 

出雲市大社町の魅力だと思うことを教えてください。

 私はUターンなので、私が「どこの誰か?」を地域の人が知ってくれていて、そういう距離の近さや温かさは魅力だと思います。みんな祖父や父のことを知っているので、話もしやすいです。地域の人が店に来るときは、料理を食べに来るというよりも「波部君のところに行ってやろう」と来てくれる人が多いですね。

 

 

これからやりたいことを教えてください。

 おもしろいことにはどんどんチャレンジしていきたいと思っています。もちろん、それによって地域活性化に繋がるような何かが、ここから生まれないだろうかと思っています。例えば、お客さんとの話の中から事業のアイディアが生まれ実現できるといいですし、もし悩んでいる人がいれば、その人に「じゃあ一緒にやろうよ」という風に…。次のステージは、この店を通じて地域の人と一緒に考えていければと思います。

 

 

 

写真・取材・文 NPO法人ふるさとつなぎ 代表 清水隆矢【市よりの委託先】

http://hurusatotunagi.jimdo.com/