東京都からIターン

石橋 雄大さん

「性に合う」出雲で、「生活の一部」のような陶芸の仕事に打ち込む。

 

東京都葛飾区出身。高校卒業後、都内で会社員として勤務。平成18年に陶芸家を目指し退職。島根デザイン専門学校での勉強を経て出西窯に弟子入り。現在は正社員として働く。

 

昭和22年設立の出西窯は、丁寧な手仕事と実用性の高い作品で県内外から評価が高い。山陰有数の大所帯でもあり、県外出身者を含む20人ほどの社員がいる。

 

 

陶芸を仕事にしようと考えたきっかけは?

 私は、東京で生まれ育ちました。高校卒業後はマンションの昇降機の点検・メンテナンスなどに携わる仕事をしていましたが、「もっとやりがいを感じられる仕事がしたい」「目に見える、形に残る仕事がしたい」と転職を考えるようになりました。

 それまでに、何度か家族で陶芸教室に通う機会があったのですが、「土を焼いて形にする」というシンプルさ、わかりやすさに惹かれていました。こうした経緯があり、陶芸を仕事にすることを決意しました。

 

 

出西窯との出会いは?

 まずは学校で基礎を学びたいと考えました。陶芸の中でも興味のあった備前焼の学べる学校をインターネットで探したところ、岡山の市街地にある学校と、島根県仁多郡奥出雲町にある「島根デザイン専門学校」の存在を知りました。「どうせなら、とことん田舎に行きたい」と考え、現地訪問を経て島根に来ることを選びました。

 島根で暮らし、学校で陶芸を学ぶ中で、出西窯の話はよく耳にしていました。縁あって就職活動の際に1週間ほど職業体験をさせていただきました。その際、陶芸の方向性にも共感できましたし、職場の雰囲気も良く感じました。立地的にも、田舎でありながら少し行けば市街地に出ることができ、その点も魅力でした。結局、3年間弟子として雇っていただき、その後正社員になりました。正社員になり今年で4年目です。

 

 

島根(出雲)で暮らした感想は?

 性に合っていると感じます。都会にいた時よりストレスが少ないです。前職時代は疲れた顔をしていたようで、島根に来て少しした頃、東京に帰ると「あか抜けた」「爽やかになった」とよく言われました(笑)

 

 

島根(出雲)で陶芸の仕事をする意義は?

 都会と違って誘惑が少なく、陶芸に集中できることが魅力です。私にとって陶芸は、生活の一部のようなものです。つくりはじめると、ずっと傍にいないといけないこともあるし、場合によっては夜中や祝日でも仕事場に来る必要もあります。だからこそ、性に合っていて、集中もしやすい環境でもある出雲で、陶芸に打ち込めることの意義は大きいですね。

 

 

仕事として陶芸をすることのやりがいと難しさは?

 周りの人の方が上手なので、比較すると全然できないな、と感じることもあります。ですが、何年か続けていく中で少しずつ上達していく実感があり、それがやりがいです。1つできるようになると、違う駄目な部分が見えてきて、また時間をかけて改善して…といった具合です。数日でできるようになるわけではなく、うまくいかない日々が続くこともあります。これが仕事でなく、例えば陶芸教室に通っているだけなら、そこが限界だったと諦めることができます。しかし、仕事なのでそうはいかず、必死にやって、上達していく必要があるのできつい時もあります。

 

 

出西窯で良かったと感じることは?

 出西窯では精神的な部分をたくさん教わっていて、それが支えになっています。それが、大変なことがあっても続けられている要因の一つです。朝礼や終礼・普段の仕事を通じて、ものづくりと直結した「お陰様の精神」を教わります。また、創立当時の話もよく聞きますが、創立者の5人は素人から初めて、いい作品をつくれるようになりました。こうした話を聞くと「自分も才能は無いかもしれないが、頑張って積み重ねれば先代の方々のようにいいものがつくれるようになる」という確信が持てるので、迷わずやってこられました。

 

 

陶芸を含む、伝統工芸を志す人へメッセージをお願いします。

 難しい面もありますが、自分を信じて頑張ることが大事です。伝統文化は貴重なものなので、しっかり受け継いでいってほしいです。私も、出西窯の意思を少しずつでも汲み取り、受け継いでいきたいです。

 

 

写真・取材・文 NPO法人ふるさとつなぎ 代表 清水隆矢【市よりの委託先】

http://hurusatotunagi.jimdo.com/