UIターン者の声

中国の上海からUターン

飯塚 聡さん

北京に4年、上海に10年。企業戦士から青ねぎ農家への転身

 

平らかな田園が広がる出雲市斐川町出東地区に、青ねぎ農家・飯塚聡さんのハウスが立ち並んでいます。5年前にUターン、始業3年半で8棟のハウスを管理される飯塚さんの以前の勤務先はなんと上海!世界経済の最前線で活躍されていた飯塚さんが農家へ転身された経緯をお聞きしました。
 

 出身はここ出雲市斐川町の出東、沖洲です。

  大学では農業経済を学びました。いえ別に狙ったワケじゃなくて、たまたま。(笑)島根を出て関東に行きたかったので東京の大学に進学しまして。とはいっても農業の実践は全然なく、実際に学んだのはUターンしてからです。

 もともと海外に興味がありまして、大学の先生に相談したら姉妹校の北京の語学学校を紹介されて1年留学し、そのまま現地の日本企業に就職したんです。

 北京にある市場調査をする会社に4年おりまして、そろそろ日本に戻ろうと思って帰国し就職活動をしたところ、熱心に声を掛けてくれたのが名古屋が本社の、建材を中国で仕入れて開発し、日本へ輸入する会社でした。そこで現地経験を買われて出向し、上海に10年いることになりました。

 

Uターンのきっかけ

 何で帰ったかって…まぁ、田舎の長男なので帰ってこいと言われますからね。

いつか帰ろうとは思っていたので5年前、結婚して子どもが出来たタイミングで帰って来ました。仕事の日々のプレッシャーやストレスやらで身体を病むなと感じていましたし。帰国後の仕事の計画は全然なく、しばらくゆっくりするつもりでした。

経営モデルを試算、そして青ねぎ農家へ。

 こちらに帰って来てすぐ仕事も探したんですが、自営で出来て経営のモデル試算も悪くない農業がいいかなと。

ハローワークに行った時に、たまたま東部技術校さんのアグリビジネス課というスクールを紹介していただきました。半年しっかり農業の基礎を学んだ上で農業をやっていこうと決めました。もともと実家は兼業農家だったので農業に馴染みはありました。

 当初は果物がつくりたかったんです。出雲はブドウが有名ですが、私は背が高いほうなので棚を作るのがネックでして。自分だけが作業するのであれば私の背丈に合わせられるのですが、家族も作業することを考えると棚を使う作物は出来ないなと思い、いろいろ模索しました。

 斐川のおもな農作物は、お米と玉ねぎ、キャベツやブドウ、最近では蕎麦やサツマイモもありますが、どれもしっくりこない。棚を使わない果樹はイチジクがあるけれど、斐川では誰もやっていない。そんな時、たまたまJAさんから斐川町の農業公社さんの青ねぎリースハウスが2棟空いているとご紹介いただいたんです。それで青ねぎに決めました。Uターンしてから1年半後でした。

  青ねぎはひとつのハウスで年に3回収穫出来る。回転が早く、年中収穫できるから技術の蓄積も早いです。モノは地味ですけど、食卓に必要とされるものですしね。

―たった3年半でしっかり事業展開していらっしゃって、すごいですね。 

 周りに青ねぎ農家の先輩方がいるので、聞きながらですよ。色々と試行錯誤しながら取り組んでいます。今、収量はハウス1棟につき大体420kgくらいを目指して、全部で8棟やっています。 出荷した青ねぎは「出雲だんだん青ねぎ」というブランド名で出雲・松江・益田・浜田・広島に出しています。スーパーに行かれた際はぜひ(笑)。

 

Uターン後の出雲の印象

 大きくは以前と変わってないですね。さして言うなら外国の方が増えたなという印象ですね。そしてこんな狭い地域でスーパーが多い!買い物は便利ですね。 それと妻とも話していたのですが、少子化というわりには出雲はけっこう子ども連れの方が多いですね。あと、お宮祭りとか運動会とか、地域の催しが昔と変わらず多いと感じます。

 

今後の取組。青ねぎづくりの魅力。

 これから規模は増やしていきたいですね、そして良い商品を年中つくって出荷出来るようにしたいです。

 青ねぎで一番出やすいのが急激な気温の変化とか水不足による葉先の枯れなんですけど、枯れが出るからといって水をやりすぎると柔くてひょろひょろしたものになって倒れたり、湿気が多くて病気が出たりします。だから生育に伴って水の量を減らしていくんですね、出荷前はほぼ水をやりません。そうするとしっかりした青ねぎになります。だから水加減が大事になります。市場とかスーパーなどでは持ちが良いしっかりしたネギが喜ばれます。

 青ねぎ作りの魅力は、ひとつのハウスで1年で3回以上収穫出来ること、「出雲だんだん青ねぎ」というブランドで売ることができること、 そして軽いので女性でもつくりやすいこと。

だから今後UターンIターンをされる方はぜひ青ネギを、と。(笑)

島根で農業をしたいという方には青ねぎもありますよ、とおススメしたいですね。ねぎ農家も高齢化で引退される方が多いですから、ぜひ!

 

出雲の魅力は郷土愛。地域みんなでやる取り組み

この斐川はちょうどいい田舎。山深いわけでもなく、買い物も便利ですし、暮らしやすいと思いますね。空気がきれいで食べものが美味しい。

―中国とは違いますよね?

全然違いますね。大都会の北京や上海は生活は便利ですが、空気や水、環境衛生面は良くなかったです。ダイナミックに発展する中国では日本では味わえないことをたくさん経験しました。ハプニングや困難もありましたが、現地の同僚や友人にとてもお世話になって、むしろ良い思い出のほうが多いですね。私にとっては北京も上海も「住めば都」。正直なところ、このままずっと上海で暮らしてもよかったんです。

 

 帰って来た理由は…郷土愛かな。親も年をとるし、常会も出ないといけんし。(笑)

こちらでは地域に貢献できますから、自分という人間の存在意義がより強くなるかなと感じています。中国では地域でみんなで一緒に何かをするという取り組みは全くないですからね、完全な個人主義。そこから比べると出雲の地域での活動…宮祭りとか、常会とか、消防団とか、地域という身近な狭いところでの取り組みは魅力があるかも知れません。その中の一員となって ある程度、地域に貢献できる。今、私も消防団に入っていまして、火災予防週間なので地域を回っています。地域で暮らすうえで地域への貢献は大切なことですから。

 ということで、Uターンして農業だけでなく地域貢献も頑張っているということでお伝えいただけたらと思います。(笑)

 

 終始冗談を交えながら、お話してくださった飯塚さん。

「いや別に」、「たまたまですよ」と仰いながら、たった3年半で盤石な事業展開をされている姿に世界経済の最前線で培われた逞しさが伝わってきました。世界に通用する強さ、その下地となっているのは郷土愛に根ざした出雲人の氣質かも知れませんね。

そして郷土愛の源はきっと仲睦まじい家族。

「青ねぎハウスが大好き!」というお子さんたちと微笑ましく見守る奥さまと、

温かなご家族とともに、これからも出雲を盛り上げてください。

飯塚さん、お仕事の最中ありがとうございました。

 

 写真・取材・文 たまちハウス 三品 知子

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