神奈川県からIターン

高居さんご一家

 

親がのびのびしていれば、子どもものびのび育ちます。それができる環境です。

 

松江市出身の佳史さんと東京都出身の眞子さんは、東京の美術大学在学中に知り合う。東日本大震災を機に島根県に移住し、佳史さんのご実家での暮らしを経て出雲市多久谷町の古民家に入居。佳史さんは工業製品のプロダクトデザイナー、眞子さんは染色のデザイナーの仕事をそれぞれ営む。3人のお子さんがいる。
※インタビューは眞子さんのみで行いました。

 

 

関東から出雲市多久谷町に移住された経緯は?

 小さい頃からものづくりが好きで、美術大学に進学しました。1年生の頃に器やガラスなど色々な分野を試す機会があったのですが、その中で染色が一番ピンときたため、染色の道に進みました。卒業後は、美大予備校という美術大学を目指す人が通う予備校で講師をしながら、制作活動も続けていました。

 その後、大学の同級生だった主人と結婚し1人目の子どもが生まれた頃、東日本大震災が起こったんです。1か月経ってもなお続く余震や、原発事故に不安を抱えていると、松江市にいる主人の両親が「おいで」と言ってくれて、家族で移住することにしました。

 しばらく主人の両親の実家で暮らしていましたが、私は染め物をするので家を汚してしまいます。迷惑が掛かってはいけないので、違う住まいを探すことにしました。ちょうどその頃、島根には空き家がたくさんあるという話を聞き、主人の両親の実家から30分圏内の空き家を探しました。知り合いづてに10軒ほどの空き家を紹介してもらい見学した中で、一番気に入ったのが今の家です。元々、この家は民選の初代島根県知事が住んでいた家だそうです。何度も家主さんとお会いし、貸していただけることになりました。そして、3年間お借りして住んだ後、購入しました。

 主人は、移住を機に工業製品のプロダクトデザイナーとして独立しました。私は中学からの同級生と「ミツトリヒトギ」というユニットを組み、染色のデザイナーとして活動しています。夫婦2人とも自営業なので綱渡りな面もありますが、日々充実しています。

 

 

どんな作品を制作しておられるのですか?

 以前は手ぬぐいなどを自宅で染めていたのですが、制作主体を大きな布に変更してからは、自らの手で描いたデザインをもとに、信頼できる職人さんに発注して染めていただいています。一口に染色といっても色々な技法がありますが、「シルクスクリーン」という版画のような技法で染めています。

 主に、動植物など身近なものをモチーフにデザインしています。例えば、玉ねぎやトマト、鯉、キノコなど。染色というと花をデザインされる方が多いし学校でも最初にそれを学ぶのですが、花は多くの人が見て「綺麗」と思うものです。それよりも、身近にあるもので人が目に留めにくいものを題材にして、その中のおもしろい部分、かっこいい部分を引き出して表現していきたいんです。実は、玉ねぎもトマトも自分たちの畑で採れたものを参考にしていました。

 他にも、雲をテーマにしたデザインがあります。出雲に引っ越してから、雲の隙間から光がさす神秘的な光景をよく見かけます。雨上がりなどに山から雲がうまれる様子もこちらに来て初めて見ました。東京ではまず見られない光景で、感動することが多かったので雲を表現してみました。

 ミツトリヒトギの活動は、私は島根、相方は東京と拠点は離れていますが、メールや電話で意思疎通できるのでやりとりはスムーズです。出雲に来たことでのびのびと制作でき、たくさんのインスピレーションも受けられる環境を手に入れることができ、良かったと思っています。

 

 

子育ての環境としてはいかがですか?

 3人の子どもを育てていますが、子育て環境としてはばっちりですね(笑)。例えば、東京では子どもが泣いたら近隣を気にして「早く泣き止ませないと」と思っていましたが、こちらでは隣家までが遠いので一切気にする必要がありません。最近では、ピアノも実家から持ってきましたが、音漏れもほぼ気にすることなく弾いています。

 そんな環境なので、親があまりきりきりせず、のびのびできます。子育てって、親がのびのびしていることがとても大切だと思うんです。それが、子どもにも伝わりますからね。親がのびのびしていれば子どもは勝手にのびのび育ちます。

 東京にいるときは、パーソナルスペースが近いので、子どもが騒ぐたびに人に迷惑を掛けているのではないかと常にそわそわしていました。

 出雲では、車での移動が多いこともありますが、子どもが騒いでも気にすることなくいられるのでとても気楽です。子どもと大声で歌を歌いながら移動するなんて、東京にいたときには考えられませんでした。

 

 

制作に関して、目標はありますか?

 デザインを見ただけで「ミツトリヒトギだ!」と認知してもらえるようになりたいですね。あとは、町でミツトリヒトギのアイテムを持っている方に出会えるようになりたいです。手にとって下さった方が少しでも幸せな気持ちで毎日を過ごせるよう、ひとつひとつ想いを込めて作り続けます。

 なお、自宅の一部を改装しギャラリー兼店舗にしていますので、ぜひ気軽に遊びにいらしてください。

 

 

暮らしの面で、今後やりたいことはありますか?

 制作と暮らしは切り離せないものですね。子どもも見つつ制作をすることもありますし、子どもが私の横でまねをして絵を描いていることもあります。生活の中に制作があるような、すべて繋がっているような感覚です。昔から、子どもに安心感を持ってもらうために家で仕事ができる方法を探していたので、今それが実現できています。まさか2人とも自営業になるとは思いませんでしたが(笑)

 

 

 

写真・取材・文 NPO法人ふるさとつなぎ 代表 清水隆矢【市よりの委託先】

http://hurusatotunagi.jimdo.com/