UIターン者の声

東京都からIターン

小川 舞雨子さん

青森県八戸市で生まれ育ち、進学を機に東京へ。映画の宣伝会社への勤務を経て、2015年に夫の両親の暮らす出雲市湖陵町に移住。現在、出雲市知井宮町にある「出雲民芸館」で働き、施設再興に向けた一翼を担っている。 ※民芸とは日常的に使われる工芸品のことで、民衆的工芸の略です。

大好きな民芸と、人とのつなぎ役に。

 

青森県八戸市で生まれ育ち、進学を機に東京へ。映画の宣伝会社への勤務を経て、2015年に夫の両親の暮らす出雲市湖陵町に移住。現在、出雲市知井宮町にある「出雲民芸館」で働き、施設再興に向けた一翼を担っている。

※民芸とは日常的に使われる工芸品のことで、民衆的工芸の略です。

 

 

出雲市湖陵町に移住されるまでの経緯は?

 子どもの頃から映画が大好きでした。映画に関わる仕事がしたいと思い、東京の映画宣伝会社で25歳から10年間働きました。仕事の傍ら、趣味でアウトドアに熱中し、主人と山登りなどを楽しんでいたのですが、あるとき急に「器」に興味が沸いてきました。後でわかったのですが、そのとき私は妊娠していたんです。急に生活に関するものに関心がいったのは、本能だったのかもしれません。それからは、休みの日にデパートに行って器を見るようになりました。そして、近所のカフェで愛媛県の砥部焼と出会い、民芸を知りました。

 そんな中、出雲市湖陵町で暮らす夫の両親に介護が必要ということになり、家族3人で湖陵町に移住することになりました。

 引っ越してから、私が出雲で興味を持てることは何だろうと考えたのですが、それはやはり民芸だと思いました。ここには出西窯をはじめ、民芸に関する場所や人が多いですから。移住後しばらくは、窯や工房などを訪ね歩いていました。

 

 

出雲民芸館で働くことになった経緯は?

 出雲民芸館は、もともと1974年に出雲民芸協会によってつくられました。地域を代表する豪農だった山本家の蔵を改装し、民芸品や古道具が展示されています。開館当初は、出雲初のミュージアムとして賑わいましたが、次第に来館者は減り、近年は閑散としていました。そこで、運営母体である出雲民芸協会の人たちや、県内の民間企業などが連携し出雲民芸館を再び盛り上げていこうという動きが始まっていました。その一環で、(公財)ふるさと島根定住財団の助成金も活用しながら、出雲民芸館の再興を担うスタッフを受け入れようという話が持ち上がっていました。

 ちょうどその頃、私は出雲に移住して数か月が経ち、そろそろ仕事を探そうとしていました。ある日、顔なじみのカフェの店主から出雲民芸館での仕事を紹介してもらいました。関心のある民芸に関わる仕事なうえ、以前やっていた宣伝の仕事の経験も活かせそうで興味を持ち、働かせてもらうことになりました。

 

 

出雲民芸館でのお仕事について教えてください。

 この仕事を始めたばかりの頃は、展示品に関する知識も少なかったので社会科見学に来た小学生の質問に答えられないなど悔しい思いもしました。なんとかしなくてはと思い、図書館で本を借りたり詳しい人に聞いたりして民芸などに関する知識を増やしてきました。

 仕事の内容は、掃除や事務、来館者の案内などの基本的なことはもちろんですが、それだけではありません。出雲民芸館の来館者を増やし、施設を再興していくための動きも出雲民芸協会や民間企業の人などと連携をとりつつ行っています。例えば、以前は開店休業状態だった売店のリニューアルを行いました。売店の運営は、松江の人気民工芸品店「objects」に担ってもらっています。他にも、facebookやホームページを立ち上げての情報発信、地元の作家を講師に迎えての体験イベント「みんげいの学校」の開催など幅広く行っています。

 今後は、特別展の開催なども予定しています。お陰様で、来館者は私が入った当初から1年で約3倍まで増えました。でも、まだまだこれからです。島根の人口自体が限られている中で来館者を増やしていくのは、やはり簡単ではありませんね。今後は、観光客にも来てもらうなど工夫が必要です。

 

 

出雲での暮らしや仕事はいかがですか?

 気候がよく住みやすいですよ。私が生まれ育った青森のように寒さが厳しいわけではありませんし、東京のように蒸し暑くもないですね。雪もあまり降りません。今住んでいる家から海が一望できるのも、とても気持がいいです。

 それと、東京で勤めているときは仕事を休むことが難しかったです。例えば、子供の体調が悪くなっても迎えに行けなかったことがあります。あの時はもう、ぼろぼろ泣いてしまいましたね。バリバリ働いている人が多い業界だったので、子供を持つと働きづらい部分がありました。仕事自体は充実していたのですが「ずっと続けるわけにはいかないな」と思っていました。今の仕事は、何かあったら変わりに出勤してくれる人もいるので、休むこともできて助かっています。

 

 

出雲への移住を考える方へのメッセージをお願いします。

 都会でやっていたような仕事をそのまま探すのは難しいかもしれません。でも、私が出会った仕事のように、表立って求人はしていない素敵な仕事もあります。興味のあることに関わりを持ちながら行動していれば、何か見えてくるものがあるはずです。

 

 

写真・取材・文 NPO法人ふるさとつなぎ 代表 清水隆矢【市よりの委託先】

http://hurusatotunagi.jimdo.com/