UIターン者の声

香川県からのUターン

今岡 淳さん

出雲市で生まれ育った今岡さんは、高校卒業を機に香川県へ進学・就職ののち、生活環境を変えるためUターン。出雲市内にある、構造物の検査・調査をする会社へ転職して3年目に突入し、現在、実りある日々を過ごしています。 そんな今岡さんに、Uターンの経緯と心境の変化についてお話を伺いました。

 

 

今岡さんの働く会社は、出雲市内の主要生活道路沿いにあります。

あらゆる構造物の検査・探査・調査・診断などを行う会社で、現地へ赴き構造物の安全性を調査したり、社内で報告書をまとめる事務作業をしたり、と忙しい毎日を過ごされています。

 

「朝8時半くらいに現場へ出向いて、夕方までコンクリのヒビや構造物の健全度などを調査する日もありますし、一日中事務処理をする日もあります。現場によって出張し、宿泊することも多々ありますが、前職に比べたらのびのびと仕事ができています。」

 

そう言いながら朗らかに笑う今岡さん。

前職は一体どのようなお仕事をしていたのでしょうか。

 

「昔から『いつか県外に出たい!』と思っていたので香川県の大学へ進学して、そのまま県外でコンビニのスーパーバイザーとして就職しました。……が、コンビニは24時間営業なので昼夜関係なく対応に追われ、精神的にも体力的にもしんどくなって退職しました。」

 

退職がUターンを考えるきっかけになったのですね。

 

「そうですね。出雲に住む両親にも仕事を辞めるときに相談したら、『それなら出雲に帰ってきたら?』と言ってもらって。それと次の仕事は無理をしない働き方ができる会社がいいという気持ちもあったので、地元に帰ろうと思いました。」

 

出雲にUターンするという前提で転職活動を始めたという今岡さん。現在の職場はどのような経緯で入社したのでしょうか。

 

「出雲市が開催しているUIターンの就職相談窓口に行ったときに紹介していただきました。昔は土木建築系の仕事には全く興味なかったのですが、話を聞いているうちに面白そうだな、と(笑)」

 

UIターン者を多く受け入れている会社ということもあり、今岡さんは無事採用に至りました。未経験での入社で、不安もあったことと思います。

 

「そうですね、不安はありましたけれど、自分は新しいもの好きなうえに好奇心があるので、この業界は性に合っていました。知れば知るほど奥深い分野なので、知識をつける面白さがあります。」

 

会社のバックアップもあり、働きながら多くの資格を取得しているという今岡さん。どんなことにやりがいを感じているのでしょうか。

 

「自分たちの仕事は道路やトンネルの調査をして結果を報告するというものなので、その結果、修理されるのか取り壊されるのか、そういったことは分かりません。けれど後に現場を通ったとき、変わらずそこにあると『自分の調査は役に立ったんだな』『やって良かったな』という気持ちになりますね。」

 

もちろん、仕事では大変だと感じることもあるのでは?

 

「調査は信頼と責任によるものが大きいので、その点は大変だなと思います。間違いが間違いだと分からず報告されてしまうのが一番怖いので、慎重に正しい結果を出さなければいけません。けど、そういったことも充実感に繋がっていますね。」

 

そう話す今岡さんの表情は、真剣ながら明るい雰囲気です。前職のときに比べて、生活にはどのような変化があったのでしょうか。

 

「だいぶ健康的になりました(笑)前職では転勤が多く、各地方への転勤や、仕事が忙しくてほとんど家に帰れなかった生活だったのに比べて、今はきちんと人間らしい生活ができているというか。地元の友人にも、戻ってきた直後は顔つきが厳しかったけど、今は穏やかになったと言われます。」

 

生まれ育った地元で、羽を伸ばしながら自分らしい生活ができていると語る今岡さん。Uターンしたことによる後悔は全くないと言い切ります。

 

「給料は確かに減りましたが、前職ではお金はあっても使う暇がなく、さらに体を壊してしまい意味がなかったので……きちんと暮らせるだけのお給料があって有効に使える時間がある今の生活のほうが暮らしやすいですし、自分に合っていると思います。」

 

この考えは一度県外に出たからこそですね、と笑う今岡さんに、出雲を出る前の気持ちを聞いてみました。

 

「子供の頃はとにかく都会に出たかったんです。出雲に魅力を感じなかったですし(笑)自分が子供の頃はネットや通販もそこまで発達していなかったので、都会に行けば何でもあるという憧れもありました。」

 

出雲の暮らしも都会の暮らしも、両方を経験したからこそ自身に合う暮らしを選択できた今岡さん。

Uターンをして、改めて感じた出雲の魅力はどんなところでしょうか?

 

「文化的な面を魅力だと感じるようになりましたね。以前は存在していることが当たり前のように思っていた出雲大社ですが、改めて大きな文化遺産だな、と思うようになりました。

あとは出雲風土記とか、昔の古いものが息づいているのも魅力的です。都会みたいな煌びやかさはないのですが、ざわざわしていない落ち着いた空気感もいいなあと思います」

 

ゆっくりとした出雲の生活を満喫している今岡さんに、今の生活で目標にしていることを聞いてみました。

 

「仕事では取得が難しい資格がいくつかあるので、それに合格して専門性を高めたいですね。資格があれば出来ることが増える世界なので、幅を広げていきたいです。それと我が社は新しい技術や機械もどんどん取り入れているので、乗り遅れないよう日々勉強していきたいなと思います。

趣味のほうは、高校でやっていたドラムを再開したいなと思っています。Uターンして生活が落ち着いたから、色々なことにチャレンジできるのが嬉しいです。」

 

今岡さんは、ご自身の体験をもとに出雲市主催のUIターンフェアや就職相談会にUターンの先輩として参加することも。この取材でも、UIターンを考えている方に向けて、コメントを頂きました。

 

Uターンする方は若い時に出雲を出ていると思うのですが、戻ってくると以前住んでいたときとは違った魅力を感じることも多いと思いますよ。仕事先も探せばありますし、暮らせるだけの給料もあるのでUターンということを難しく考えなくても良いのでは、と思いますね。

Iターンの方も、お給料とか色々な理由で踏みとどまる方もいますが『まずはやってみる』『ダメだったら都会に戻る』というくらいの考え方でもいいかと思います。UターンもIターンも、一歩踏み出すことが大事なのではないでしょうか。」

 

 

 

とても和やかな様子でお話してくださった今岡さん。出雲に戻ったことが自分には合っていた、と笑う晴れやかな表情が印象的でした。

 

精神的にも肉体的にも余裕が生まれたからこそ、さまざまなことに挑戦していく今岡さんは、UIターンの先輩としてとても力強い存在だと思います。今後もUIターンフェアや就職相談会などにご出席いただくこともあると思います。お会いできた方は、ぜひ直接お話を聞いてみてくださいね。

 

今岡さん、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 写真・取材・文 宇佐美 桃子

 今岡さん写真提供(2枚目、3枚目、6枚目)