UIターン者の声

東京都からUターン

伊藤 耕一さん

出雲市白枝町出身。報道関連の仕事に就き、東京・広島・宮城・福岡と日本各地への転勤を経験。2010年にUターン。現在は、ライフワークとして地域づくり活動も行っている。

悠久の歴史があり、自然と共に生きてきた日本人の原点が息づく場所です。

 

 

出雲市白枝町出身。報道関連の仕事に就き、東京・広島・宮城・福岡と日本各地への転勤を経験。2010年にUターン。現在は、ライフワークとして地域づくり活動も行っている。

 

 

出雲の魅力はどんなところだと思いますか?

 転勤で全国各地に住んできたからこそ思うのですが、出雲は本当に魅力的なところです。日本海に見事に沈む夕陽、新鮮な食材など、魅力を挙げればきりがありません。ただ、やはり一番は神々の時代から続く悠久の歴史があることです。今でもまち全体から歴史のたたずまいを感じることができます。また、古くからの伝統や神様の存在を何気ない暮らしの中にも感じられます。例えば、農業や漁業のように自然と共に在り、自然からの恵みを受け取っている産業が今でも続いています。以前、海苔摘みの現場を見せてもらったことがあるのですが、その日の仕事が終わった夫婦が帰る前に海に手を合わせていました。その人たちにとっては当たり前のことかもしれないですが、自然が神様であり自然の恵みに感謝しながら生活するのは、とても素敵なことだと感じました。

 人間は、ずっと自然と共に生きてきた歴史がある動物です。変わってきているのは近代のちょっとの間だけ。本来は自然と共に在るべきなのかもしれませんし、出雲にはまだまだそんな暮らしが残っています。

 

 

他に、出雲にUターンして良かったと思うことを教えてください。

 野菜や魚、果物など、食材がとてもおいしいですね。特別なブランド商品というわけでもないのですが、こんなにおいしいのはやはり鮮度がいいからでしょう。畑でとってきてすぐ食べることもできますし、買ってきても遅くても1日前に収穫されたものが口に入ります。都会には世界中の食べ物があるし、上手に料理する技術を持った人もいます。だけど、出雲では手を加えなくても素材そのもののが十分においしい。地元の人にとっては当たり前でなんとも思っていないかもしれないですが、鮮度がいいものが身の回りにあるのはとても豊かなことです。

 

 

Uターンしてから、暮らしの中で変化したことはありますか?

 家に仏壇と神棚があるのですが、帰宅するとそれぞれに手を合わせるようになりました。特に何か宗教を信じているわけではないのですが、自然とそうしたくなるんです。手を合わせることによって、なんとなく心が落ち着き、自分を見つめる時間にもなります。ほんの1分あるかないかだけど、大切なことだと思います。出雲での暮らしは、都会に比べてゆとりがあるのでこうした時間も持ちやすいですし、実際にこのような文化が大切にされています。

 

 

今の活動と、これからの展望について教えてください。

 いつか地域に恩返しするような仕事がしたいという想いがあります。島根には、魅力ある活動を頑張っている人たちはたくさんいますが、「点」の場合が多いです。頑張っている人同士がつながると、もっと良くなるのに。なので、人と人をつないで「面」にして地域全体が盛り上がっていくような仕事がしたいです。今は、報道の仕事を続けながら、できることからライフワークで活動しています。

 

 まずは自分の住んでいる町内のことから始めました。地域の結びつきを強めるきっかけとして、定期的にイベントを開催しています。近所にある願楽寺(がんぎょうじ)というお寺の本堂を貸切り、音楽を聴く会を催したり、竹で飾りをつくりライトアップしたりしました。地域も高齢化が進む中で、農業も含めて皆で助け合いながら生活できる仕組みを作っていきたいと考えています。そのためには、皆で集まって語り合うことが必要だと思います。最初から固いことをやって抵抗感を持たれてもいけないので、1つのきっかけとしてこうしたイベントをしています。

 

 また、私の住む白枝町を含む高松小学校区全体を考える動きもあります。この校区には約1万人が住んでいますが、地域の人たちで助け合っていく仕組を行政に頼らずにつくっていけないかと有志で話し合っています。例えば、学校が終わった子どもたちが集まれる居場所や、高齢者の買い物や移動の手助けを行うなど、若い世代から高齢者まで気軽に集まれる拠点づくりがしたいです。今話し合っているメンバーには内科の先生や福祉施設の経営者などもいるので健康相談から介護支援そして最後まで自宅で暮らせる基盤づくりなどをしたいです。賛同者も増えてきていて、近々会として発足できるよう準備しています。

 

 昔から「風土」という言葉が好きでした。「風」は外からやってきた人で「土」はもともと地元にいる人たち。この2者が交わることで地域の「風土」ができていきます。私は転勤族だったので外からの目線を持ってますから、「風の人」の目線で地域に風を送り込めるようになりたいんです。そんな目標を持ちながらも、できることから少しずつ進めているところです。

 

 

出雲に興味を持っている人へのメッセージをお願いします。

 10人いたら10人それぞれに何か感じるものがあるはずなので、是非訪れてみてほしいです。晴れなら晴れ、雨なら雨で感じるものがあります。例えば、私は冬が大好きです。空の低いところに雲があり、その雲からサーチライトのように太陽が照らす様子は、まさに天孫降臨で神々が降りてくる地だと私には思えます。人によって感じ方に違いはありますが、心の琴線にふれる何かが出雲にはあります。特に、地元の人と話をすると感じることが多いかもしれません。出雲には、都会のようになんでもそろっているわけではありません。でも、それでいいんです。このままが素晴らしいですから。

 

写真・取材・文 NPO法人ふるさとつなぎ 代表 清水隆矢【市よりの委託先】

http://hurusatotunagi.jimdo.com/