UIターン者の声
大阪府からのUターン
吉川 裕崇さん 沙織さん
出雲市の最南端にある佐田町。閑静な山間に吉川さんの住まいとご実家、そしてご実家が経営している株式会社井口組があります。出雲市内の高校を卒業後、九州の大学を出て住宅設備メーカーの関連会社に就職した裕崇さん。東京と大阪の転勤生活を経て、2020年の秋にご家族とともに家業を継ぐため出雲へUターン。奥様の沙織さんとお子さんも、ご一緒にIターンされました。 そんな吉川さん夫妻にUIターンの経緯と感想を伺いました。会社のすぐそばにご実家があり、その離れで暮らす吉川さん。現在はご実家の会社である井口組に勤め、土木建築業の経験を積んでいるそうです。
コロナ禍がUIターンの転機になったという吉川さんに、詳しい経緯を伺いました。
裕崇さん「九州の大学を卒業したあとは学校の先生の紹介で、東京の住宅設備メーカーの関連会社に就職しました。転勤があると聞いていたものの、特に異動することなく12年間働いて、妻ともその間に知り合って結婚して。そのあと大阪に転勤になったのですが、直後にコロナで緊急事態宣言が発令されてすぐ在宅ワークになったんです。東京にいた時と仕事の進め方も変わり、将来のことをじっくり考える時間ができた、というのがUターンのきっかけです。」
それまでUターンを考えたことはあったのでしょうか。
裕崇さん「長男だからいつかは戻るかなと思って妻にも話をしたことはありますが、具体的なことは何も……もっと歳を取ってからでいいかな、と漠然と考えていた程度です(笑)」
そうしてコロナ禍のなか、家業を継ぐためご一家でのUIターンを考えた吉川さん。
奥様の沙織さんとは何度も話を重ねたそうですが、移住の考えを打ち明けられたときのお気持ちはいかがでしたか?
沙織さん「最初は動揺しましたけど、いつかは島根に行くと思っていたので早くなっただけかな、と。特に抵抗感や不安感はありませんでした。むしろ私は東京生まれ東京育ちなので、田舎ができるのが嬉しかったくらいですね。」
都会で生まれ育ったからこそ、憧れがあったのですね。
ご両親の反応はいかがでしたか?
沙織さん「私の両親は『運命だね!』と快く送り出してくれましたが、逆に旦那のご両親が私の田舎暮らしをすごく心配してくださって(笑) 生粋の都会っ子に島根は厳しくない?いいの?という感じで。けれど一度東京を離れて大阪で生活していましたし…やっぱりそんなに不安はなかったですね。」
大阪への転勤でワンクッションあったのが良かったのですね。
裕崇さんは不安などありましたか?
裕崇さん「収入面は多少心配しました。大きな会社でサラリーマンとして安定した収入を得ていたのが、個人経営の会社に戻ることになるのでちゃんと家族を養えるのかなって。けれど実家もありますし、何かあれば助けてもらえるし、逆に助けられるかなと思ったのですごく不安ということはありませんでした。」
そう楽しそうに語る吉川さんご夫婦。
実際にUIターンをしたあと出雲の印象はいかがでしたか?
裕崇さん「町内に子供が減ったな、と感じたくらいでしょうか。あ、小学校が複式学級(異なる学年を一つに編成した学級)になっていると聞いたときはビックリしました。」
沙織さん「私は山が近いことに感動しました! 出雲に来てから免許をとったのですが、自然がいっぱいで、空も広く、見晴らしがいい場所が多いので運転していて楽しいです。」
東京や大阪では車が不要だったため一生免許を取ることはないと思っていた、とおっしゃる沙織さんは生活が変わり、毎日が新鮮で充実しているそうです。
具体的にどのような変化があったのか、お二人に聞いてみました。
裕崇さん「一番大きな変化は生活サイクルです。東京にいたときは営業と現場管理の仕事で、朝は早くないものの終わりが22時~23時くらいで、休みも週に1度あるかないかという感じでした。今は朝が早く6時半くらいに事務所の掃除をして8時くらいに現場作業を始めますが、17時過ぎには終わるので家族とコミュニケーションが取りやすくなりました。」
沙織さん「夕方の一番いて欲しい時間にいてくれるというのは私も嬉しいですし、子供達もたくさんお父さんと話せるので嬉しそうにしていますね。東京にいたときは俗に言うワンオペで何かあったときに相談がしづらかったので。家族揃って規則正しい生活ができるのも有難いです。」
裕崇さん「夜遅いのはやっぱり体に良くないね(笑)今は実家で働いているので学校行事に参加するときの休みも取りやすいですし、気持ちの面で余裕が出ていると実感しています。それと以前の会社だと自分は居なくても大丈夫という感じがあったのですが、今は橋の修繕工事や配管の修理などをして地域に貢献できている実感があって、それがやりがいにもなっています。」
出雲に引っ越して約3ヶ月。生活サイクルが変わり、心身ともに良い方向に変化していると語るご夫婦。
そんなお二人へ、今後の目標を聞いてみました。
裕崇さん「子供たちが大きくなったらアウトドアの趣味をもちたいですね。これだけ自然に囲まれているので、近場でもキャンプや釣りなど楽しめることは多いと思います。」
沙織さん「私はもう少ししたら働きに出ようと思ってます。地域の方々と知り合って繋がりができていけたらいいな、と。あとは免許もとったことですし、色々なところへ行ってみたいです。」
裕崇さん「仕事の面では、ゆくゆくは会社を継ぐのでそのための勉強を頑張りたいですし、現場もたくさん経験していきたいと思っています。家族のケアもしつつ、ですね(横目で沙織さんを見る)」
奥様「(裕崇さんを見ながら)とにかく体に気をつけてほしいです。元気なら何があってもどうにでもなると思っているので。そのためにもしっかり支えていきたいです」
お互いを思いやる素敵なお言葉に、筆者も市役所の方々も思わず拍手。お二人のあたたかな人柄がとても印象的なインタビューとなりました。
コロナ禍が大きなキッカケとなり、出雲に戻る決意をした吉川さんご一家。新生活をスタートし、豊かな自然に囲まれながら毎日を楽しんでいる様子が伝わってきました。
これからも仕事や育児などさまざまなことを楽しみながら、仲睦まじく出雲生活を満喫してください。
吉川さん、お忙しいなか有難うございました!
写真・取材・文 宇佐美 桃子
吉川さん写真提供(2枚目・3枚目)