UIターン者の声
京都からUターン
玉木 千恵さん
平田の玉木園芸の隣に2018年4月にオープンした 「お菓子のみせ たま」。 店主は、京都で評判の洋菓子店で責任者として活躍していた玉木千恵さん。 Uターンして僅か1年半後、ご家族が営まれる玉木園芸のお隣に洋菓子店を開業しました。 関西で活躍されていた千恵さんが なぜ出雲に戻られたのか、話を聞きました「お菓子のみせ たま」パティシエ兼オーナー
平田の玉木園芸の隣に2018年4月にオープンした 「お菓子のみせ たま」。
店主は、京都で評判の洋菓子店で責任者として活躍していた玉木千恵さん。
Uターンして僅か1年半後、ご家族が営まれる玉木園芸の隣に洋菓子店を開業しました。
関西で活躍されていた千恵さんが なぜ出雲に戻られたのか、お話を聞きました。
Uターン前にしていたこと、Uターンした想い。
Uターン前は京都の洋菓子店で責任者として働いていました。関西の大学で管理栄養士の資格を取得した後、製菓の専門学校へ行って、そして 京都の洋菓子店に就職したんです。
出雲に帰ることは元々決めていました。ここで(出雲で)お店をしたい、と。
自分の家が園芸店をしていたので、隣接した土地で、一緒に、相乗効果というか。
玉木園芸で買い物したお客さんが、寄ってくれて休憩できるイメージで…。
製菓の道に入ったときから、それが目標でした。
―そのまま京都で仕事を続けることもできたわけですよね?
本当のことを言ったら「今だ!」と思って帰ってきたワケではなくて、手首を痛めたのがきっかけでした。(京都のお店が)すごく忙しい店だったんですよ。いかに効率的に仕事をこなすか、その中で後輩にも教えていかなければならない状況だったので負担がすごく大きくて。
このまま仕事をしていたらお店もできなくなるなと思い、それで出雲に帰って来ました。
ずっとここ(出雲)で店をしたい、というのがあったので。 今は手首はだいぶよくなりました。
―都会で活躍して、そのまま都会で暮らす方も多いなかで「故郷で開業する」という最初からの志を貫かれたわけですね。
ずっと出雲に帰るとは決めていたのですが、なかなか(立場的にも)難しかったのが、手首の故障で機会を得ました。
帰って来た理由は…やっぱり地元の人に喜んでもらいたくて。
特注のケーキを京都のお店でも作ったりしていたんですけど、すごく喜ばれるんですよ。
それを地元(出雲)の人に喜んでもらいたいという気持ちがありました。
Uターン後、惣菜づくりのアルバイトをしながら開業準備にかかりました。
痛めた手首の状態をみながら 開業準備中も食に携わる仕事をしたいと思って。
1年半前の2016年の12月に帰ってきて、2018年4月に店をオープンしました。
―Uターン後、僅か1年半で開業されたんですね!
オープンして半年、想い描かれたようになっていますか?
店をオープンしてからは とても順調です。その前の開業準備がけっこう大変でした。工務店さんとのやりとりとか。枠組みをつくるまでは苦労したんですが、その後は自分が動くだけだったので、さほど苦労はしなかったです。
オープンしてからは ありがたいことに爆発的に忙しくて。忙しすぎて家には寝に帰るだけ、数時間仮眠してまた仕事、ここ(お店)で生活しています(笑)、食事も母が持って来てくれたりして。
家族にはとても助けてもらっています。
今後、取り組みたいこと。「もっともっと”地元感”を出したい。」
今、店では地元食材とか近場のものを使うようにしているんですけど、
もっともっと”地元感”が出せないかなと思っていて。
例えば、ほうじ茶プリンがあるんですが、ほうじ茶はすぐ近くの茶畑のお茶屋さんのもの、
卵も平田の地元の卵、牛乳はお隣の鳥取の白バラ牛乳を使っています。フルーツもコスト・品質・安定供給が整えば たくさん使えます。もっと地元産で賄えればと思っています。
開業準備中、お惣菜づくりのアルバイトをしていたのが地元産品の直売所でした。
そこで良い農家さんたちとの出会いがあって。このひとのイチジクはすごく美味しいな、とか、この方は桃を作っているな、とか。直売所に置かれているフルーツは朝穫れで、こだわって作られている農家さんはいいものを出されていてすごく美味しいんですよ!そういうものを使いたいんですけど、なかなかここから毎日買いに行くこともできないし、じゃあ配送してくれるかといったらロットも少ないし。すごく良いものがあるけど、使うことができない。
もっといいルートができればなぁと。いい方法がないかなぁといつも思っています。
例えば、栗なども こちらで殻ツキの生栗の状態から加工するというのは余裕がなくてムリなので、農家さんが加工して むきぐりの状態で真空パックにしてもらえたら使えるのにな、と考えたり。
もっともっと良い素材が沢山あるのに、それを使う経路が断たれているというか。私みたいな小さいお店だと余計に、なかなか直に農家さんとつながることができないのが残念。
もっといい方法がないかなと、いつも思っています。
そうしたら、もっと地元の良い素材を使えますから。
お菓子を通じて伝えたいこと。「愛を持って、誠意を持って。」
実は、洋菓子店で焼き菓子を大事にしていないお店ってすごく多いんです。脱酸素剤入れて、冷凍をかけて、ストックが少なくなったら解凍して出す。それも日持ちが1か月ももつとか。でも食べるとスカスカなんですよ。だから(そういう方法は)私はしたくない。
脱酸素剤は使わないし、賞味期限もすごく短いですけど、でも美味しいものを食べてもらえる。やっぱり美味しいものを美味しいうちに。だからロスも出ますよ、売れないときは。
ですけど、そういうものはお客さんに味見として出したら喜んでもらえるし、
「美味しかったけん、買いに来たよ」と言って頂けるから。
私は、お菓子を通じたエンターテイナーでいたいなと思っています。それは美味しさもそうだし、デコレーションケーキだったら、その方の要望にできるだけ応えてあげたい。
素材は地元のものを使っていたら地元のお客さんも安心してもらえるし、地元の農家さん、卵屋さんにも喜んでもらえるし。
愛を持ってというか誠意を持って作っているし、それを届けたいです。
出雲の潜在能力、魅力。
うちでは、ジャムもできるだけ地元のものを使って作っています。いちじくは多伎のもの、プルーンも出雲のもの。うちで穫れたブルーベリー、あんずをジャムにしたり。そういう潜在能力というか地域資源が出雲は豊富ですね。
それから出雲って、ひとが優しいというか温かいというか。のんびりしているというか(笑)。人と人とのつながりを大事にする、それがいいなと思います。
都会だと人と人との付き合いが機械的になりがちですが、ここは温かい。
先日も精米所で私の次におばあさんが並んでいて、お米を運んであげようと思っていたら逆にそのおばあさんが私の30kgのお米を運んでくださって(笑)。人が優しいですね。
ほかに出雲の何がいいかって言われたら「出雲タイム」ってありますよね?(笑)
出雲に帰って来て、空港から家に向かう景色がとってものどかで車に乗っているだけで 「あー帰って来た!」って思います。
でもやっぱり人なのかな。京都もとても良いところでしたが、大切な人たちが転勤や引っ越しで京都から居なくなった時に「私はここにいる意味がない。ここではない」と思いました。
帰って来た理由は 出雲だからというより、故郷だから。
私の居る場所は「ここだ!」って思うんです。
インタビューを終えて
出迎えてくださった千恵さんは、お菓子作りへの情熱と故郷への愛情たっぷりの、
ご自身の想いに率直に努力する素敵な女性でした。
地元への愛と誠意と情熱に溢れたお菓子が並ぶ、「お菓子のみせ たま」。
地元のお客さんに愛されている理由がよくわかりました。
千恵さん、お忙しい中、本当にありがとうございました。
写真・取材・文 たまちハウス 三品 知子
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