出雲縁結び ポケット人生ゲーム

出雲神話ミニ講座

『古事記』や出雲神話、神話の背景である出雲について学ぶミニ講座です。




出雲神話

この世の始まり、黄泉の国

はるかな昔のことです。 天上に、神様たちが住んでいる、高天原というところがありました。 あるとき、神様たちが高天原から見下ろしてみますと、下界はまだ生まれたばかりで、ぜんぜん固まっていません。 「このままではいけない」と、イザナギノミコト、イザナミノミコトという二人の神様に、天沼矛(あめのぬぼこ)という大きな槍をあたえ、国造りをするようにと命じました。 そこで二人は、高天原から地上へとつながる天浮橋の上に立って、槍の先で、どろどろとした下界をかきまぜました。 二人が天沼矛をすうっと引き上げると、槍の先からぽたぽたと落ちたしずくは、みるみるうちに固まってひとつの島ができあがりました。 この島のことを「おのころ島」といいます。 イザナギとイザナミは、さっそくおのころ島へとおりてゆきました。 そこでイザナギがイザナミに尋ねます。 「お前の体は…どんな具合だい?」 「はい。私の体はだいぶ整ってまいりましたが、一つ足りない所があるようです」 「そうか。私の体はだいぶ整ってきたが、一つ余分な所があるようだ。そこで、私の余分なところで、お前の足りないところを塞いで、 国を生もうと思う」 おのころ島の上にりっぱな御殿を建てて、そこで結婚の儀式をしました。 結婚の儀式として柱の周りを周ります。 イザナギは柱の左側から、イザナミは右側から周り、真ん中で出会ったところで、まずイザナミが声をかけます。 「まあ!なんて素敵な殿方」 次にイザナギが声をかけます。 「おお!なんと愛しい乙女」 しかし、最初に生まれた子は体がぶよぶよして蛭のようで、とても子とはいえないものでした。 なかなかうまくいかないので神様に相談してみると 「女が先に声をかけたのが良くなかった。もう一度、言い直しなさい」 と言われたので、今度はイザナギの方から声をかけてみました。 すると生まれたのは、しっかりした島々でした。 島ができあがると、それぞれの島を治める神様を沢山生みましたが火の神様を生んだとき、イザナミは大やけどをしてしまいました。 イザナギはけんめいに看病をしましたが、そのかいもなく、イザナミはとうとう亡くなってしまいました。 イザナギは、イザナミのなきがらにとりすがって、ぽろぽろとなみだを流して泣きました。 そしてイザナミを、出雲の国と伯耆の国の境にある比婆山にほうむりました。 イザナギは、妻に大やけどをおわせた火の神のことを、どうしても許すことができず、とうとう、剣で切り殺してしまいました。 イザナミが亡くなってからしばらくの間、イザナギは一人で悲しんでいましたが、どうしてもがまんすることができなくなりました。 そこで、死者の国まで妻をむかえに行こうと思いたちました。 死者の国は、黄泉の国といって、深い地の底にあるのです。 黄泉の国に着くと、イザナギはとびらの前に立ち、イザナミに、自分といっしょに地上へ帰ってくれるよう、呼びかけました。 「ああ、愛する妻よ、私とおまえの国造りは、まだ終わっていないのだよ。どうかいっしょに帰っておくれ」 ところが中からは、イザナミの悲しそうな声が帰ってきました。 「どうしてもっと早く来てくれなかったの。私は、もう黄泉の国の食べ物を食べてしまいました。ですから、地上へはもどれないのです。けれども愛するあなたのためですから、地上へ帰ってもよいかどうか、黄泉の国の神様にたずねてみましょう。それまで、私の姿を決してのぞかないでくださいね」 そう言われて、イナザギはじっと待っていましたが、いつまでたっても妻からは返事がありません。 とうとう待ちくたびれたイザナギは、妻を探すために黄泉の国へと入っていったのです。 黄泉の国は、どこまでも真っ暗なやみが続いています。 うす暗い灯りをもって、目をこらしていたイザナギは、思わず「あっ」とさけんで立ちつくしました。 何とそこには、腐りかけてうじ虫がいっぱいたかっている、イザナミの体が横たわっていたのです。 おまけにその体には、おそろしい雷神たちがとりついています。 「あれほどのぞかないでと言ったのに、あなたは私に恥をかかせましたね」 自分の醜い姿をのぞかれてしまったイザナミは、髪の毛を逆立ててすさまじく怒りました。 「イザナギをつかまえて、殺しておしまい」 イザナミがそう命令するや、黄泉醜女という悪霊たちが、イザナギをつかまえようと、あちらからもこちらからもわき出るように現れました。 イザナギは地上へ続く黄泉平坂に向かって、必死ににげました。 イザナミと黄泉醜女たちは、すさまじい勢いで迫ってきます。 イザナギはけんめいに走りながら、髪に結んでいたかざりを放り投げました。 するとかみかざりからはたちまち野ブドウの木が育って、たくさんの実がなりました。 それを見た黄泉醜女たちは立ち止まって、実を食べ始めましたので、そのすきに、イザナギはどんどん走りました。 けれどもしばらくすると、また悪霊たちが追いついてきます。 イザナギは、こんどは髪にさしていたくしを放り投げました。 すると、そこからはたけのこが次々に生え、黄泉醜女たちはまた立ち止まって、食べ始めました。 こうして懸命に逃げるイザナギの行く手に、ようやく地上の世界が見えてきました。 しかし黄泉醜女たちは群れをなして追いついてきます。 イザナギは片手に持った剣を後手にふり回して防ぎながら、ようやく坂のふもとまでたどり着くと、そこに生えていた桃の木になっていた実を3つもぎとって、黄泉醜女たちに投げつけました。 すると、桃の実がもっている不思議な霊力におそれをなした黄泉醜女たちは、みんなにげ散ってしまいました。 けれどもイザナミは、まだ恐ろしい顔でせまってきます。 ついにイザナギは、黄泉平坂に、1000人がかりでないと動かせないような大岩を引っ張ってきて、それで黄泉の国と地上の世界の間をふさいでしまったのです。 追いかけてきたイザナミは、岩の向こうから大声でさけびました。 「これからは、あなたの国の人を、一日に1000人ずつ殺しますからね」 「それならば、地上では一日に1500人ずつ子供が生まれるようにするよ」 イザナギは答えました。 こうして二人は別れ別れになり、地上の世界と黄泉の国とは、永久に行き来できない石のとびらでふさがれてしまったのです。 けれどそれからというもの、亡くなる人よりも生まれる人の方が多くなり、地上の人は次第に増えるようになったのだそうです。 地上に戻ったイザナギは、黄泉の国に行って穢れた体を清めるため、水に体をひたしてみそぎをなさいました。 その時イザナギが左目を洗うとアマテラスオオミカミという光輝く女神がお生まれになります。右の目を洗うと清らかに輝く月読の命(ツクヨミノミコト)が、鼻を洗うとたくましいスサノオノミコトがお生まれになります。 イザナギはこの三柱の神の誕生を、大変喜ばれました。 そして天照大神には高天原を、月読尊には夜の国を、スサノオノミコトには海原を、それぞれ支配させることにされたのでした。