UIターン者の声

広島からIターン

呉田 昌子さん

広島で生まれ育ち、その後さまざまな土地や職で経験を経て、2022年7月に出雲へIターンをした呉田さん。後悔しないために動くと言う呉田さんの心の転機やそのときの思い、出雲との縁、Iターン後の気持ちの変化などのお話を伺いました。

出雲市役所すぐ近くにあるビルのなかに、島根県中小企業労務協会があります。綺麗で落ち着いたオフィスでは中小企業の経理など経営に関わる業務代行を行っており、今回ご紹介する呉田さんの職場となっています。知り合いが全くいない状況からIターンを決めたという呉田さんですが、就職から約1年が経ち職場では皆さんと共にとても楽しく仕事をしているようです。

今回の取材では呉田さんのIターンに至るまでの経緯、さまざまな転機、そして出雲に引っ越したあとのお気持ちなどを伺いました。

「生まれも育ちも広島で、高校生のころ所属していた演劇部をもっと深めたいなと思い卒業後は東京へ上京し養成所に入りました。その養成所で1年に1回、先へ進むためのオーディションがあるのですが3年目でそれに落ちてしまって。そのほかの所に行くことなども考えましたが、一旦気持ちをフラットにしたいなと思って広島の実家へ戻りました。」

広島へ戻られたあとのお仕事はどのようなことをされていましたか?

「色々やりましたね。飲食店とか、コールセンターとか。働いているなかでサービス業が自分に向いているなという自覚はありました。演劇をやっているときもそうでしたが、人に喜んでもらうのが好きというか。そうしたら今度は『サービス業を極めたい!』という気持ちになって、じゃあ世界一のサービス業ともいえる東京ディズニーランドで働こう!と思ってまた東京に出ました。それが27歳ぐらいのときですね。」

すごく思い切りがいいですね! ディズニーではいかがでしたか?

「キャストとして働いて、接客のノウハウやディズニーならではの接客の仕組みなど勉強させていただきました。大体4年くらい働いて、目標としていた接客の賞も頂いたことで自分の中で区切りがついた感じがあり、また広島に戻りました。」

前回とはまた違うスキルや経験を得てUターンをされたのですね。

「そうですね。だからこそサービス業として前回より人の幸せに寄り添えるものをと思い、戻ったあとは結婚式場探しの仕事に就きました。結婚に向けた雑誌の対面バージョンのような感じです。転勤もあったので名古屋に行ったり静岡に行ったり、住む土地は転々としていました。」

お客様の幸せのため、という点でディズニーのときのお仕事と近いものがありますね。

「幸せな出来事のお手伝いをすることで自分も幸せな気持ちになれるので、やっぱり向いていましたし楽しかったですね。そこは9年くらい続きました。ただ、最後のほうは婚活サービスとかも台頭してきて、若いスタッフ達のほうがお客様に合っているのでは、と考えることが増えたんです。あとは西日本豪雨があり通勤に船を使わなければならなくなって不便になったこともあり、『自分の人生このままでいいのかな』と思う時間が増えました。」

色々な要素が重なって、改めてご自身の人生について見直しされたのですね。

「そうなんです。で、色々考えて税理士事務所に転職しました(笑)」

今までのサービス業からは一転した方向転換ですね! どのようなお気持ちの変化があったのでしょうか?

「もともと資格で簿記を持っていましたし、前職でマネージャー業務もしていたので裏方のほうが自分に合っていると思ったんです。幸いにも実務経験なくても雇ってくださるところがあったので、会計の仕事に就きました。数字は嘘をつかないので、サービス業とは違った面白さがあると思います。」

思い切った転身ですが、怖いなというお気持ちはありましたか?

「不安ももちろんありましたが、逆に留まったことに対する不安のほうが大きかったですね。やらなかった事への後悔はないようにいつも選択しています。」

常にご自身が納得できる道を選択なさっているのですね。

「そうなんです。でも、そこで働いている期間で感染症が流行してしまって……。私は県外の友達に会いに行ったり一人で旅行したりするのが好きなのですが、それが全然できなくてフラストレーションになった時期がありました。少しおさまった頃にようやく車で行ける範囲で、と思って何気なく来てみたのが出雲だったんです。

そうしたらすっかり出雲にハマって(笑)素晴らしいところだなと思ってそれから2〜3ヶ月に1度くらいの頻度で来ていました。街中を車で走っているだけで『この辺りは住みやすそうだな』とか『自分が住むならこのあたりがいいな』とか、そういったことを考えるようになっていました。」

自然と惹かれていったのですね。移住しよう!という決定打となった出来事はありましたか?

「松江で行きつけになった雑貨屋の店主さんが、屋久島へ移住された経験のある方で。色々と移住について話を聞いていたら、店主さんは『自分は行ってすごく良かった』と仰っていたんです。その時期は移住をするかしないかもやもや悩んでいましたけど、その店主さんの一言で『私も移住したい』と霧が晴れた感覚になったのが決定打になりましたね。」

それから移住に向けて、どのように行動なさったのでしょうか。

「まずは話だけでもと思って島根定住財団の広島窓口に行ってみました。そうしたら出雲担当の方をご紹介いただき、家よりもまずは仕事を探そうという話になりました。移住を決めたのが12月、仕事を辞めるのが6月だったので結構時間もありましたね。

仕事は会計とサービス業の両面で探していましたけど、定住財団の方から今の職場(島根県中小企業労務協会)をすごく推していただいて。それで協会の理事長とオンラインで面談をしてお話を伺って、『いいな』という直感で決めました。それが5月くらいのことです。」

島根定住財団の方々も、ウエディング関係でお仕事をなさっていた呉田さんと同じようにマッチングのプロですものね。呉田さんの人柄やスキルが合致したからこそのお勧めだったのでしょう。

「有難いです。『出雲で働くこと』よりも『出雲に住むこと』が私のやりたい事だったので、そこも考慮いただけたのかなと思います。自分を必要としてくださる会社があるならそこで頑張ろう、という気持ちだったのでベストマッチでした。」

目的が明確だと、道もハッキリしますよね。

その後お家も職場付近で決定して7月に移住されたことと思いますが、実際に移住した感想はいかがですか?

「想像した以上に最高でした。約1年経った今でも思いますけど、毎日『出雲来て良かった、幸せ〜』って思って暮らしています。移動するだけでも、スーパー行くだけでも、何をしても楽しいんですよね。空が広いな〜って外に出るたびに清々しく思ってます。

あとは人がすごく優しいと感じたことでしょうか。アパートの向かいの一軒家の方をよく見かけるので挨拶をしていたら、ある日その方がご自身の畑から急に大根を引っこ抜いて『挨拶してくれる良い人だから』って渡してくれて。今まで色々なところで生活してきましたけど初めてのことでビックリして嬉しくなりました。

他にも沢山の方に親切にしていただいて、誰かに優しくすることを自然とできる街なんだということを実感しました。」

まさかの直抜き!心温まるエピソードです。

逆に苦労したり嫌だなと思ったりしたことはありますか?

「今まで雪が降らない地域で住んでいたので、スタッドレスタイヤが初体験だったことでしょうか。ただ、タイヤ交換の際は色々な方にアドバイス頂いたので苦にはなりませんでした。

それと梅雨の湿気がすごかったり、業務上年配の方とお話しする機会が多いので強い方言の勉強不足を感じたり、ということはありますが嫌というほどではないですね。」

確かに方言は慣れて覚えるしかありませんよね。職場でも話題になったりするのでしょうか。

「実は職場では県外の人のほうが多いので、出雲弁のことや他の地域の方言のことで盛り上がることがあります。例えば『ぬくい』って『ぬるい』のことだと思っていましたけど、出雲の方々は『熱い』という意味で使われるんです。そこで先日、認識の齟齬が生まれて笑い話になりました。」 

色々な地域から集まっている職場ならではですね。皆さん仲がよくて楽しそうです。

休日はどんなことをして過ごしていらっしゃいますか?

「そのとき見に行きたいな、と心が動いたものを見に行っています。振り返ってみれば自然のものや植物を見に行くことが多いでしょうか。松江の由志園(牡丹の栽培や高麗人参の生産地として有名な日本庭園)とか、とっとり花回廊(鳥取県立の日本最大級のフラワーパーク)とか。由志園はすごく好きで年間パスポートも買いました。逆に新しいお店の情報とかには疎いですね(笑)

東京や広島に住んでいたときの休日は友達に会うことがメインだったので、休日の過ごし方は変わったなと思います。」

出雲へIターンしたことで、自然のものへの関心も高くなられたのですね。

今の暮らしをとても気に入っていらっしゃるご様子ですが、将来の目標などはありますか?

「このまま出雲で暮らしていくことが目標なので、いつか一軒家をもちたいなとは考えています。場所とかはまだ何も決めてないですけど(笑)

もう少し身近なところでいうと稲佐の浜の清掃活動に参加したり、地域のイベントに参加したり、外に出る機会をどんどん増やしていきたいと思っています。」

有難うございました。

最後に、Iターンをお考えの方へメッセージをお願いします。

「私の行動パターンでもありますけど、『迷っているなら、まず来たほうがいい』。この一言に尽きますね。色々悩む要素や考え方はあると思うんですけど、まずやってみる。行動した時より、行動しなかった時の後悔のほうが大きいと思うので。出雲は良いところなので、ぜひ来てみてくださいね!」

 

「人が好き」「後悔しない選択をする」という芯を持ちつつ、Uターンや転勤を経てご自身の生き方を柔軟に変化させてゆく呉田さん。吸い寄せられるように出雲へ定着し、このまま定住したい、地域の行事にも参加したいと将来を語る笑顔は輝いています。

 長いあいだ人の幸せのために働いていた呉田さん。出雲に移住し、ご自分が幸せになり満たされることで、ほかの人や地域に還元してゆくという新たな幸せの循環を作られたのかもしれません。今後の出雲生活も楽しみにしています。

 

呉田さん、貴重なお時間をいただき有難うございました。

写真・取材・文 宇佐美 桃子