2025.04.08
不老山荘嚴寺
移住して間もない頃、土地勘もなく道に迷うことが続いた。
ナビに頼らず、何とか自力で帰ってみようと決めたその日は、思わぬ遠回りが待っていた。あれは、1年前の春のこと。
国道431号線を北山沿いに走っていると、突然目に飛び込んできた光輝く大樹。その美しさに心を奪われ、私は車を引き返すことにした。たどり着いたのは「不老山荘嚴寺」。寺の入口には金剛力士像と羅漢像が立ち、私が近づくと、センサーが反応し、灯りが静かにともった。その灯りに導かれるように、目にしたのはライトアップされた「枝垂れ桜」。その姿に思わず息をのんだ。
この桜は、80年前に焼失した親木の孫生(ひこばえ)だという。現在の見事な枝振りと、花のつきからは信じがたいが、かつては樹勢が衰えていた時期もあったのだそう。近年は樹木医と寺を見守る人々の手によって、再び見事な花を咲かせるようになったという。
今年はこの季節、あえて遠回りして帰路につく。そしてついにその日がやって来た。桜は満開になり、その美しさを私に見せてくれた。裏山では、時折鹿が「ピーーー」と鳴き、静けさの中に響く音が心地よい。人が少ないこの場所では、ゆっくりと桜を眺めることができる。ここは、私のお気に入りの桜スポット。心が安らぐ、そんな場所だ。