プリンIターン女子 会員No.129

2025.09.08

天体ショー

本日未明、3年ぶりの皆既月食だった。
山陰地方はあいにくの雨予報で、観測は難しいと言われていたが、万が一にかけて目覚ましをセットして眠りについた。

日付が変わった午前1:30。
友人からの「部分食が始まったよ」というLINEで目が覚める。彼はカメラマンで、兵庫から月食の様子を中継してくれていた。あわててベランダへ出ると、雷があちらこちらでピカピカ光る空に、わずかに上が欠け始めた月がはっきり見える。湿気を含んだ空気がむわっとまとわりつく。

完全に地球の影に入る皆既月食は、1時間後の午前2:30。
雲はどんどん増えていき、ひんやりとした風が吹き始める。雷の音が近くなってきて、黒い雲が月を隠す時間もさらに長くなってきた。

皆既月食時の赤銅色やターコイズフリンジとよばれる青いラインがあきらめきれず、天気図を見ながら山の方へ車を走らせる。分厚い雲が流れていく合間、まるで奇跡のように赤銅色に染まった月が姿を見せてくれた。ほんの数分間の出来事だった。

やがて空は完全に雲に覆われ、雷、豪雨と風が吹き荒れた。後半の月食は見ることができなかったけれど、この出雲の空の下で皆既月食を体験できたことがうれしかった。

月が隠れることで、ふだんは見えない星が浮かび上がるのも月食のふしぎな魅力。こういう自然の現象を、ベランダからでも、少し車を走らせた先でも見られるのが出雲の暮らしの豊かさだと思う。空が広く、自然が近い。そんな日常の一コマが、ふと特別な時間に変わる。それが、出雲で暮らすことの醍醐味かもしれない。