プリンIターン女子 会員No.129

2025.10.20

蕎麦三昧

先日まで真っ白な花を咲かせていた蕎麦畑。
久しぶりに通ったら、花はすっかり姿を消し刈り取られていた。
無性に蕎麦が食べたくなり、蕎麦屋をいくつか巡ってみることに。

最初に足を運んだのは、今市町本町にある「献上そば 羽根屋」。
創業は江戸時代末期。150年という長い年月、変わらずにこの地でそばを打ち続けてきた老舗だ。

「献上そば」という店名は、その名の通り、かつて皇室に献上されたという由緒から。格式高い名前に少し背筋が伸びる。この店のそばは、「挽きぐるみ」と呼ばれる製法で、そばの実の殻まで一緒に挽いてある。そのため、色は少し黒みがかっていて、香りがとにかく豊か。やや細めに手打ちされたそばは、つゆとの絡みも良く、のど越しも軽やかで、ついつい箸が進んでしまう。昼どきには行列ができるほどの人気店なので、時間に余裕をもって訪れるのがおすすめだ。そばがなくなり次第終了という潔さも、老舗らしい。

続いて訪れたのは、出雲大社からほど近い「出雲そば きずき」。
参道「神迎の道」沿いにあり、参拝の後にふらりと立ち寄れるのが魅力だ。
明治〜大正時代に建てられた町家をリノベーションしたという店内は、木の梁や柱がそのまま活かされており、どこか懐かしく、落ち着いた雰囲気。こちらのそばは、粗挽きの石臼挽きそば粉を使用していて、香りが強く、噛むほどにコシと風味を感じる。まさに「食べるそば」といった趣きで、しっかりとした食感を楽しめる。「縁を結ぶ」という意味でも、出雲大社の参拝後にこの店でそばをいただくのは、なんだかご利益がありそうだ。

最後に紹介したいのは、少し趣向の異なる一軒。
「風月庵」は、塩冶町の住宅街にひっそりと佇むお店だ。
観光客よりも地元の常連が多く、「教えたいけど教えたくない」そんな声が聞こえてきそうな名店。

ここでは、手打ちそばはもちろんだが、実はラーメンやカツ丼も大人気。特に「ラーメンとそばのセット」を注文する人が多く、昼時にはほぼ満席になるほど。使われるそば粉は地元産を中心に、季節や湿度によって配合を微妙に変えているというから、職人のこだわりが光る。とろりとしたそば湯は、そのまま飲んでも美味しい“飲むスープ”。つゆに加えれば、あご出汁のような深い旨味が広がり、食後の楽しみとしても格別だ。

出雲の秋は、目で見ても、舌で味わっても、心に残る季節だ。