プリンIターン女子 会員No.129

2025.07.18

古代ロマン

小学校低学年の頃、母が毎月2冊ずつ買ってくれる「日本の歴史」のマンガを楽しみにしていた。
第1巻「日本誕生」からはじまる全20巻。お気に入りは縄文と弥生の章。火を囲む人々、狩りに出る男たち、土器に模様を刻む女たち。ページをめくるたびに古代の人々の暮らしを想像しながら、夢中で読み進めた。
おかげで、中学に入ってから歴史のテストでは、(この時代に限り)満点。

あの頃に興味をもったことが、現実に体感できる場所が出雲市の山あいにある。
「荒神谷遺跡(こうじんだにいせき)」

1984年の夏。
ひとりの調査員が地面に鍬をいれると、固いものに当たった。掘ってみると、そこに現れたのは青銅の剣。その後1本、また1本……数は増え、ついには358本の剣が見つかった。銅矛、銅鐸、祭りのための道具、武器とも祈りの象徴ともつかぬそれらが、同じ谷から次々と現れたのだ。当時の様子を再現した形で見ることができる

誰が、なぜ、何のために、これほどの青銅器をここに埋めたのか。文字を持たぬ人々の、語られぬ歴史が息づくこの谷の下には、2000年の眠りから覚めた古代蓮の巨大な葉と花が、太陽に向かって力強く咲いている。
高台に立ち、蓮畑を見下ろしながら、古代の人々のくらしに思いを馳せる。


荒神谷遺跡

出雲市斐川町神庭873-8

2025.07.08

極上体験

出雲市で本格的なうなぎを味わいたいならココ、とおすすめいただいたのが「うなぎ処 鈴屋」。

趣ある古民家を、木のぬくもりある昔ながらの佇まいで、祖父母の家を訪れたような懐かしい気持ちになりながら案内されたのはお座敷。神西湖を眺めながら、料理が運ばれてくるのを待つこと30分。国産のうなぎを注文ごとに丁寧に焼き上げるため、時間は少々かかる。皮はパリッと香ばしく、身はふっくら。炭火の香りがほどよくたち、油はしつこさがなく口の中でとろける。タレがまた抜群で、最後のひとくちまで飽きることがない。肝吸いや漬物といった付け合わせも手抜きがなく、一品一品店主のこだわりが光る。

価格は決して安くないが、それに見合うどころか、それ以上の満足感が得られる。地元の常連はもちろん、遠方からのリピーターも多い人気店。静かな古民家で極上体験をしてみませんか。ここは間違いなく特別な一軒。

 


うなぎ処 鈴屋

出雲市湖陵町差海1876-4

2025.06.30

出雲弁⑱

今回は、ビジネス編。

ビジネスメールでよく使う、「ご対応いただけると幸いです」。
全国どこでも通じる、いわば丁寧な正解のフレーズ。

しかし出雲ではこういう表現が多く使われる。

「ご対応いただけると喜びます」。

ぱっと見、ちょっとフランクに聞こえるかもしれない。でも、実はとても丁寧なお願いの言い方。出雲では、「〜してくれたら嬉しいです」の代わりに「喜びます」を使うことが多い。ここでいう「喜びます」は、感情の喜びというより「ありがたい」「助かる」といった、お願いと感謝やお礼の気持ちが込められた、とても柔らかい表現のように思う。

また、誤解しやすいこんな言い回しがある。

「この資料、なおしといて」


「なおす」=片付ける・しまう

出雲弁では、片付けておいて、という意味が、標準語では「なおす」=修正すると捉えがち。
資料を片付けてほしいだけなのに、赤ペン修正された資料が手元に戻ってきた、なんてこともあるかもしれない 笑
方言ではなく、標準語だと思って使っているひとが意外と多いようだ。検索してはじめて気付く面白さ。言葉もさることながら、イントネーションの抑揚もかなり独特なのだが、県外のお客様に電話対応しているときの、なんちゃって標準語に思わず笑みがこぼれる。

2025.06.20

蔵カフェ

静かな通り沿いに、白く美しい蔵が佇んでいる。
「cafe naka蔵(なかくら)」

その建物は、100年以上前の米蔵をリノベーションされたのだとか。
開店前だというのに店の前には行列ができている。駐車場には県外ナンバーもチラホラみられ、人気の高さがうかがえる。

一歩中へ入ると、空気が一段やわらかくなるのがわかる。
高い天井に太い梁、木のぬくもりある温かな内装。ゆったりとジャズが流れ、まるで映画のワンシーンのよう。

席の選び方ひとつで、過ごし方が変わるのもこの店の魅力だ。
カウンターでは、店主が丁寧にハンドドリップする様子を眺めながら、コーヒーの香りに深呼吸。テーブル席では、椅子のきしむ音さえも心地よく、窓際のソファ席は、まるで小さな書斎のようで、ただ静かに過ごすための贅沢な場所だ。

料理がまた、心を打つ。
旬の野菜が、これでもかと美しく鮮やかに盛られたモーニングプレート。
目で見て、香りで感じて、口に運ぶたびに味の奥行きに驚かされる。正直野菜は苦手なのだが、ここのプレートは不思議と美味しくいただける。そして自家製のドレッシング。バランスが絶妙で、「この味、家でも楽しみたい」と思わず持ち帰りたくなる。
食後には、こだわりのハンドドリップコーヒーを一杯。豆の香ばしさと、柔らかな余韻。「まだ帰りたくないな」と思ってしまうが、次のお客様へはやく席を譲らねば、だ。


cafe naka蔵

出雲市今市町 中町689

2025.06.10

アマルフィー

海の匂いが風に溶け、坂の上から港町を見下ろすと、まるで映画のワンシーンのようだった。
家々が隙間なく山肌に寄り添うように並び、そのすぐ目の前には限りなく青い海が広がっている。
イタリアを訪れたことはないが「小伊津(こいづ)」を山陰のアマルフィーと呼ぶのもわかるような気がする。

観光地として整備された場所ではなく、ありのままの日常が息づく風景。トンビが風をとらえて旋回しながらゆっくりと空高く舞い上がっていく。静かな漁港には、どこか懐かしさの漂う、のどかな時間が流れている。
そんな中、散歩中の年配の男性に声をかけられた。軽く挨拶を交わしただけのつもりが、それをきっかけに堰を切ったように昔話がはじまる。県外ナンバーだったこともあったのかもしれない。今は立派な道路が通っているが、かつては目の前の山に狭くて細いトンネルがあり、車が通るたびに歩行者は壁に身を寄せてやり過ごしたという。

話は地元の神社のこと、そしてこの地に息づく信仰の話にも及んだ。
島根半島には「四十二浦」というものがあり、それぞれの浦で海水を汲み一畑薬師に奉納する習わしがあるのだそう。神仏に近い海の力を借りて、願いや祈りを届ける意味があるのだろうか。
ひとしきり話をしたあと、照れくさそうに笑いながらご自身の話をされた。こないだの結婚記念日に奥様が「生まれ変わってもあなたと結婚したい」と仰ったのだとか。思わず微笑んでしまう。あたたかく、やさしく流れる時間。気がつけば立ち話のまま1時間が過ぎていた。別れ際、足元にすり寄ってきたのは、このあたりで暮らす地域猫。人懐こくて、撫でるとゴロゴロ喉を鳴らす。港町に猫、なんとも似つかわしい。

2025.05.30

出雲弁⑰

出雲弁で書いてみよう。
こーであちょーかいねぇ(これであっているかな)?

旬のもんをお裾分けしてもらう機会がようけある。
これが田舎の特権ってもんだわ。

旬は皆一緒な時期だけん大抵は重なって、どっさりもらーことんなる。そーでも「せっかくの好意はことわーだないで。ことわーと来年はもうもらえんようになるで」って親に教えられとるけん、ありがたく頂戴すーことにしちょー。

「まげな(立派な)タケンコ、
 あばかん(沢山)まーました(もらった)けん、
 煮しめか、タケンコご飯すーだわね。
 えっと(沢山)食ってごしなはいよ」

こげに声かけてまーと、心まであったこうなるがね。

 

2025.05.19

おうちごはん

出雲市にある「おうちごはんcafe豆花」。
店内には2人掛けのテーブル席が4つと、多人数で囲めるテーブル席が1つ。
はじめてでも、ふっと力が抜けるような、そんな安心感がある。

メニューは、野菜たっぷりのおかずに、玄米ごはん、お味噌汁。
派手さはないが、ひとつひとつに丁寧さを感じる。栄養バランスが整っていて、ここで毎日ごはんを食べたら間違いなく体が整っていくんだろうなと感じる。大盛りごはんに慣れている人には、少し物足りなさを感じるかもしれないが、手間ひまを惜しまず作られた料理は、食べるひとを想う気持ちが伝わってくる。

ドリンクセットメニューも嬉しいポイント。ごはんを食べ終わったあとも、すぐに席を立つのがもったいなくなるような時間が流れている。決して特別なごちそうではないけれど、また来たいと思わせてくれる、そんな場所。


おうちごはん cafe 豆花

出雲市今市町120-6

2025.05.08

虹が滝

ゴールデンウィーク中頃。夕方から激しい雨が降った。
翌日は晴れ予報。こんなとき、雲海が発生する可能性がぐんと上がる。
市内を見下ろせる場所を地図で探していたら、ある言葉が目に留まった。

「虹が滝」

少し期待しながら地図の投稿写真を開く。
滝壺に小さな虹がかかっている写真がいくつかある。
滝壺の方角と太陽の位置を確認すると、午後には虹が見えるかもしれない。
行ってみる価値はある。

翌日は快晴の予報だったものの、明け方の空には思いのほか雲が残っていた。
期待していた雲海の姿はみられず、少し残念な気持ちに。午後からの「虹が滝」に希望をつなぐことにした。

目的地へ向かう山道は、離合も難しいほどの細さ。枝葉や草が路面に覆いかぶさり、びっしり苔に覆われ緑になった路面も。空気はひんやりと湿っている。そんななか、少し開けた明るい場所にでると、「虹が滝」の看板が目に入った。案内に従って沢へと下り、滝の音を頼りに歩くこと5分。思っていたよりも水量が多く、勢いよく流れ落ちる滝に到着。木々の隙間から、滝の飛沫に陽が差込み、小さな虹がふわっと浮かんだ瞬間、なんともいえない嬉しさが込み上げた。


虹が滝

出雲市多久谷町1216

2025.04.30

出雲弁⑯

銀行で、高齢の男性が行員に向かってこう話していた。
「ええにょばに どまかされて ててぽっぽですわ 笑」

「ええにょば」は「美人さん」を意味する出雲弁。
鳥取でも年配の人が使うため、意味はすぐに理解できる。
問題は「どまかされて」「ててぽっぽ」の部分。文脈から想像しにくいため、出雲弁に詳しい友人に確認した。

「どまかされて」は「騙されて」、「ててぽっぽ」は「無一文」の意。つまり意味は、「美人さんに騙されて、無一文になってしまいましたわ 笑」

高齢男性の冗談で、目の前の若い女性行員に「君が美人だから、つい大金を預けちゃいそうだ」と笑いを取ったものと推測。おじいちゃん若いな。
行員は意味がわからず戸惑いながらも、笑顔で応対していた。方言って知らなければ通じないが、知れば一気に距離が縮まる不思議な力があるよね。

 

2025.04.20

焼肉むべ

出雲市駅から徒歩3分。
「焼肉むべ」へ行ってきた。店内は温かみのある内装で落ち着いた雰囲気。座敷に案内され、靴を脱いでゆっくりくつろぎながら注文。

まずはサムギョプサル。厚切りの豚バラ肉が鉄板の上でじゅうじゅうと音を立てる。自分でハサミを使って肉を切るスタイル。ちょっとしたライブ感があり楽しい。焼き上がった肉をサンチュに包み、キムチやニンニク、ネギ、味噌と一緒に巻いて食べる。ジューシーで香ばしく、野菜のシャキシャキ感と合わさって、何個でも食べれる美味しさ。

次にビビンバ。ご飯とナムルを一緒に箸で食べようとしたら、コチュジャンごと全体をスプーンでよくかき混ぜて食べるのだと教わる。韓国語で「ごはん」は「パ(밥)」と発音するのだそう。「ビビンバ」は正確には「ピビンパ」と呼ばれ、「混ぜるごはん」という意味になる。ちなみに「クッパ」は韓国語で「スープごはん」の意味らしい。

焼肉メニューには、地元、島根県産のしまね和牛が使われている。ホルモンやレバーも新鮮でクセがなく、噛むごとに旨味が広がる。上質な焼肉と韓国料理の両方が本格的に楽しめるのがこの店の魅力だ。

接客も丁寧で、料理の説明やおすすめも気さくに教えてくれる。初めてでも居心地が良く、地元の常連さんが多いのも納得だ。家でごはんを食べる感覚に近いのかもしれない。次回はさらに多くのメニューを制覇したい。店名の由来も気になるところ。「むべ」って果物の名前だったような。次回ママさんに聞いてみよう。


焼肉むべ

出雲市今市町971-24

 

 

Iターン女子 会員No.129

プリン

鳥取からきました。移住者目線で日々の暮らしを綴っていきます。立派な地元民になるべく発見探検するぞ。