プリンIターン女子 会員No.129

2025.04.08

不老山荘嚴寺

移住して間もない頃、土地勘もなく道に迷うことが続いた。
ナビに頼らず、何とか自力で帰ってみようと決めたその日は、思わぬ遠回りが待っていた。あれは、1年前の春のこと。

国道431号線を北山沿いに走っていると、突然目に飛び込んできた光輝く大樹。その美しさに心を奪われ、私は車を引き返すことにした。たどり着いたのは「不老山荘嚴寺」。寺の入口には金剛力士像と羅漢像が立ち、私が近づくと、センサーが反応し、灯りが静かにともった。その灯りに導かれるように、目にしたのはライトアップされた「枝垂れ桜」。その姿に思わず息をのんだ。

この桜は、80年前に焼失した親木の孫生(ひこばえ)だという。現在の見事な枝振りと、花のつきからは信じがたいが、かつては樹勢が衰えていた時期もあったのだそう。近年は樹木医と寺を見守る人々の手によって、再び見事な花を咲かせるようになったという。

今年はこの季節、あえて遠回りして帰路につく。そしてついにその日がやって来た。桜は満開になり、その美しさを私に見せてくれた。裏山では、時折鹿が「ピーーー」と鳴き、静けさの中に響く音が心地よい。人が少ないこの場所では、ゆっくりと桜を眺めることができる。ここは、私のお気に入りの桜スポット。心が安らぐ、そんな場所だ。

2025.03.27

出雲弁⑮

「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり、
春だというのに昼間は半袖でもいいくらい。

このあいだまで寒い寒いと暖房をかけていたのに、冷房が必要だ。
梅の花も旬を過ぎて桜が色づき始めている。

ご年配の方の井戸端会議が面白かった。
濃い出雲弁が理解できるようになったので、いつか混ぜてほしい 笑

 

Aさん「ま、なんと、ひーまはぬぅくんなーますたなー」
Bさん「まほんに、あげでございますなー。
    ふがんが過ぎましたけんなー。
    だーも、よーはまんだまんだ、さみですがー」


解説

Aさん「昼間は暖かくなりましたね」
Bさん「本当にそうですね。
    彼岸が過ぎましたからね。
    でも夜はまだまだ寒いですね」

 

2025.03.24

ダルマさん

「今日はダルマになりそうだ」
そんな確信を抱きながら、海岸沿いに足を運んだ。

ダルマとは、水平線上で太陽が丸いダルマのように見える現象のこと。光が大気中で屈折することで起こるのだが、何度見ても不思議な光景。朝日で狙うときは、水平線に顔を出す太陽の位置を特定するのにアプリを頼るが、夕日の場合は見えているので狙いやすい。

ダルマが見れる条件がいくつかある。

 ・晴れ
 ・風が穏やか
 ・空が澄んでいる

空気が乾燥して澄んでいる冬や秋はダルマが見やすい。

この日は、風は穏やかで、空はすっきり晴れていた。
波の音が心地よい。太陽の高さが低くなるにつれ空の色がオレンジから赤へ変わっていく。少しの緊張感と期待を胸に、望遠レンズ越しにカメラのピントを合わせる。太陽が水平線に近づくその瞬間、もうひとつの太陽が海面から顔を出す。2つの太陽がくっつくと、大きなダルマが浮かび上がる。この神秘的な瞬間は、なかなか言葉では表現が難しい。

さらに、もし運が良ければ「グリーンフラッシュ」という現象にも出会えるかもしれない。太陽が完全に沈む直前、ほんの一瞬だけ、太陽の上部が緑色に輝く現象だ。過去に一度だけ拝むことができたので、この日も最後までシャッターを切ったが、残念ながら叶わず。いつか出雲の海でその瞬間を体験してみたい。

帰ろうかと東の空を見ると、月が昇りはじめていた。
地平線に近いところでは、レイリー散乱効果によって月は赤く染まって見える。最初は深い赤、そして徐々に色が変わり、巨大なタコ焼きが空に浮かぶ。
お腹すいたな。帰りにタコ焼き買って帰ろう。

2025.03.19

海辺の図書館

日々の忙しさに追われ、自分の時間をゆっくり過ごすことが少なくなった。

以前は朝1時間早く出勤して、コンビニで買ったカフェラテを飲みながら、餌場にやってくる白鳥をのんびり眺めるのが冬の朝の定番だった。休日には、映画を観たり、撮影やドライブを楽しんだり、図書館で本や雑誌を物色したり、充実した時間を過ごしていたように思う。

久々の連休、会社の先輩に勧めたれた「海辺の多伎図書館」に行ってみることにした。実際に訪れてみると、予想以上のロケーション。蔵書は思ったより少なかったが、お目当ての海を眺めながらのカウンター席が魅力的だった。残念ながら学生たちで満席。静かに勉学に勤しむ向こう側に、今まさに夕日が沈もうとしていた。

使用目的を伝え、撮影可能か確認したところ、館内は撮影禁止とのこと(外テラス席は撮影可)。美しい光景をお伝えできないのが悔しい。こんな素敵な空間で学んでいたら違った未来があったかもしれないとさえ思う、なんとも贅沢な学びの場だ。

出雲市には7つの図書館があり、どの図書館で借りた本でも他の図書館に返却できるとのこと。休館日でも返却ポストがあるので利用しやすい。ちなみに、出雲市内の図書館は以下の通り。

  • 出雲中央図書館
  • 平田図書館
  • 佐田図書館
  • 海辺の多伎図書館
  • 湖陵図書館
  • 大社図書館
  • ひかわ図書館

インターネット予約サービスや、ネットでの蔵書検索もできる。バーコードやICカードが主流になった今の図書館。便利にはなったけれど、アナログ時代のあの温かさが恋しい方もあるのではないだろうか。「耳をすませば」の主人公の雫ではないが、本の裏表紙に差し込まれたカード。あれはあれで物語があった。同じ名前に何度か遭遇すると、そのひとの本の選び方に興味をもったり、先を越したり、越されたり。ひとときのミステリーのような感覚が楽しかったものだ。

さて、今度はどこの図書館に行こうかな。
どうせなら7つ全部制覇するか。


海辺の多伎図書館
出雲市多伎町小田73-1

2025.03.03

給食の味

ある日、会社の先輩から「これ、給食のふりかけだよ」といただいたのは「ソフトひじき」という商品。おもむろに袋をあけ、お菓子を食べるように口の中に放り込む先輩。

「ひじき?」と思いながら袋を開けてみると、セミドライのひじきと白ゴマが入ったふりかけ。さっそく白ご飯にかけて一口食べてみるとうまい!甘じょっぱくて、香ばしい味がご飯にぴったり。どこか懐かしいような、ほっとする味。私は初めてなのだが、今も昔も出雲の学校給食では定番なのだと教えてもらう。

ひじきは水で戻してから調理するのが面倒だったり、味付けが決まらなかったりで、積極的に食べてこなかった。一人暮らしを始めてからというもの、野菜や海藻を食べる機会がめっきり減っていたので、手軽に食べられる「ひじき」があるとありがたい。また、個包装なので、使いやすさも抜群。普通にご飯にかけるのも美味しいけれど、沢山いただいたので炊き込みご飯を作ってみた。料理は決して上手なほうではないが、かなりの出来栄えの良さ。ひじきを食べる機会が減っていた私も、これなら毎日でも食べたいと思える。

製造元は出雲市にあるアルファ食品株式会社さん。
米加工食品を販売して50年以上の信頼のメーカー。アルファ化米の商品が有名な会社なので、皆さんのご自宅にある防災用の保存食のパッケージ裏をみたら、製造は出雲市と記載があるかもしれない。軽量かつコンパクトで長期間保存でき味も良し。車中泊で旅行する私にとっては大変ありがたい商品を作っている会社がまさか出雲市にあったとは驚きだ。

2025.02.27

出雲弁⑭

小学校三年生で習う「こそあど言葉」
自分から近い場所や、遠い場所などを示す時に使う指示語。
この「こそあど言葉」、出雲では少し変化する。

・これ → こー
・それ → そー
・あれ → あー
・どれ → どー

例①)あーして、こーして、そーして、次はどーにすーかね?
訳①)あれして、これして、それして、次はどれにするの?

例②)そーは、どーのことかね? こーかね? あーかね?
訳②)それは、どれのことですか? これですか? あれですか?


動詞も「する」の「る→ ”ー”」最後が伸びることが多いように感じる。
・する → すー
・みる → みー
・たべる → たべー

「〇〇だけん・・・かね?」「〇〇すーけん・・・だわね」
疑問形の語尾に「かね」言いきるときに「わね」をつけるとさらに雰囲気が。
まだまだ奥が深いぜ、出雲弁 笑

 

2025.02.25

初参拝

出雲にきてから、一度もお詣りしていなかった出雲大社。
寒波で雪に見舞われた連休の早朝、思い立って参拝に向かうことにした。
なかなかここに足が向かわなかったのは、きっとタイミングがあったんだろうなと思うことに 笑

家を出たときは猛吹雪で4センチほどの積雪があったが、到着する頃には雪も止み、風もおさまっていた。午前6時前。神門通りは車通りも少なく、観光客の姿もほとんど見当たらない。駐車場から最も近い正門に向かう。観光情報誌やSNSでみかけるこの大鳥居は二の鳥居。江戸時代はこの広場に芝居小屋があったのだとか。ここから神門通りのはるか先に一の鳥居「宇迦橋(うがばし)の大鳥居」の姿がみえる。全部で4つ鳥居があるのだが、鳥居の真ん中は神様が通る道なので左右の道を進むのがマナーらしい。雪を踏む「ギュッギュッ」という音を心地よく感じながら拝殿に向かう。

出雲大社の参拝作法は独特で、「二礼四拍手一礼」。
二回おじぎをして、四回柏手を打ち、最後にもう一度おじぎを一回する。
あれ、どうだったかなと思いながら、前の方の動作を真似た 笑

拝殿の後ろに回ると御本殿の大屋根が見える。2本の木が交差した「大社造り」とよばれる独特な建築様式。松江にある美保神社にも同じ大屋根がある。島根には「えびすだいこく両参り」という風習があり、出雲大社と美保神社をセットで参拝するとご利益が倍増すると言われている。出雲大社の大黒様と、美保神社の恵比寿様が親子なので、父である大黒様からお参りするのが良いとされている。

ずっと気になっていた出雲大社に参拝できて、心からホッとした。清々しい空気の中で心も洗われたような気がした。参拝を終える頃には雪も止み、青空がみえはじめた。参道も参拝者で賑やかになり、雪も徐々に溶けてきた。次は美保神社に行かねば。良縁、良縁。

出雲に来てから、まだ出雲大社にお参りしていない。
「その土地の神さまにきちんと挨拶するのが礼儀だ」と曾祖母に教わったことがあり、次の休みこそはと決めていたのだが、この日、車は大社ではなく一畑薬師(いちばたやくし)へと向かう。「物事にはタイミングがある。今日はまだその日じゃないよ」と神さまに言われたことにしておこう 笑

一畑薬師は目のや病気や、子どもの成長を願う人々に信仰されている場所。地元では正式名称ではなく「お薬師さん」と呼ばれる方が多いように感じる。標高200メートルの一畑山山頂にあり、眼下に宍道湖を一望できる絶景スポットでもある。運がよければ雲海越しの大山も拝めるよと、帰りに立ち寄った参道のお蕎麦屋さんに写真をみせていただいたのだが、これはまた次回のブログに。

参道を進むとゲゲゲの鬼太郎の目玉親父が迎えてくれる。
ブロンズ像の台座には様々な言葉が刻まれ、親父殿がその言葉に合わせた動作をしているのが面白い。例えば「欲にころぶな」という言葉には、参道でお金を拾おうと転ぶ親父殿の姿があり、思わず笑ってしまう。また、十六羅漢像があるお寺は数あれど、ここお薬師さんではそれぞれの羅漢像に詳細な説明がある。「天才バカボン」の「レレレのおじさん」のモデルとなった強面の羅漢像に出会い、思わず「へーーーー!!!」

そして心揺さぶられる場所がもうひとつ。
八万四千仏(はちまんしせんぶつ)。
おびただしい数の仏像が整然と並ぶ光景は圧倒される。それぞれ奉納されたもので祈りが込められている。仏像のサイズは、数メートルのイメージをもっていたが、実際には約20センチくらい。ギャップに驚きながらも、そのスケールと圧倒的な存在感に引き込まれる。

この日、本堂では涅槃図が公開されていて、ちょうど読経の最中だった。曾祖母が信仰心の深い人だったこともあり、幼少期に聞いた読経の音が蘇り、心が落ち着くような不思議な感覚に包まれる。『オンコロコロ センダリ マトウギソワカ』一畑薬師の真言。これを唱えながら本堂を時計回りに100回まわると、心が清められるのだそう。

最近では、寺院でもデジタル決済が導入され、便利さに驚かされる。
お賽銭やおみくじ、絵馬の購入がPayPay対応になっていて、現金を持ち歩くことが少なくなった今、デジタル決済の進化を実感する。お金のやり取りが簡単になり、気軽に参拝できる時代が到来したのだなと感じる。

一畑薬師は地元の人々に深く愛されている場所で、特に目の病気を治す力があると言われている。絵馬に「目が良くなりますように」と願いを込め帰路についた。ここは、訪れるすべての人々に癒しと力を与えてくれる、大切な場所だ。

2025.02.07

くるみ市

「くるみ市」大津町の住宅地にある市場、いやマーケットとでも言うべきか。
いずもな暮らしのブログ記事を拝見し、心惹かれお邪魔した。
このブログ、移住検討される方のみならず、観光客、在住者への情報発信も兼ねているなと思う。

店舗の外には、連れて帰りたくなる花苗や樹木が色々と販売されている。
部屋中グリーンでいっぱいにしたいものの、枯らす心配がありセーブしているが、良心的な値段に財布の紐も心も緩む。
敷地内にある手作りの公園では、子どもたちが元気に遊ぶ姿があり、店内はご年配の方から子連れの家族まで、幅広い世代で賑わっている。

地元の特産品や、新鮮な野菜のコーナーも充実。
地元で採れた旬の野菜はどれも鮮やかで、ここの土地の恵みを感じることができ、家で料理をするのがとても楽しみになる。特に魅力的だったのは、木工屋さんの手作り雑貨。一つ一つ丁寧に作られたアイテムが並んでいる。コーヒー好きの私の目を奪ったコーヒー用の道具もあり、ついつい手に取ってしまった。木の温もりが感じられる道具って、使うだけで心地よいひとときが過ごせる気がする。また、自分で作るバターナイフのキットもあり、思わず「これ、作ってみたい!」と心が躍り購入。自分の手で削りながら作る体験は、いつ作ろうかワクワクしているところ。

併設のパンと焼き菓子のお店も人気で、この日は長い列が。あまりの混雑に今回は諦めたが、それだけおいしいパンが並んでいる証拠。使用する酵母が毎日違うと伺った。次回は是非、パンをゲットしよう。

新鮮な地元野菜を買いにきたはずが、思わぬ収穫。忙しい日常の中で心を癒してくれる大切なひとときとなった。ここで手に入れるものは、ただの「商品」ではなく、そこに込められた人々の思いや温かさも一緒に持ち帰ることができるような気がする。忙しい日常から少し離れて、地元の恵みを楽しみながら、手作りのアイテムを手に入れる贅沢な時間を過ごしたい方に、ぜひ訪れてほしい場所。


くるみ市
パンと焼き菓子の店
〒693-0011 出雲市大津町1574-8

2025.01.30

出雲弁⑬

先日、「おおはいごん」という言葉が会話にでてきた。
ヒバゴンでも、ピグモンでもないらしいので会社の先輩に教えてもらった。

おおはいごん、はいごん、の2種類があるようだ。

普通に騒ぐ=はいごん
大騒ぎ=おおはいごん
騒いだり、慌ててオタオタするようなときに使うらしい。

なるほど
はいごん < おおはいごん

「うちの旦那は財布がないないって、おおはいごんしてかーにけー、テレビの上にちゃんとあーがね!」
先輩に教えてもらった使い方例のイントネーションが面白かったが、書き留めるのが大変だ 笑

Iターン女子 会員No.129

プリン

鳥取からきました。移住者目線で日々の暮らしを綴っていきます。立派な地元民になるべく発見探検するぞ。